浜辺の家 Beach House 2008年(平成20年)
浜辺の家 Beach House 2008年(平成20年)
エロスEros(クピドCupid)(アモルAmor)
性愛の神god of love and sex
世界の成立の初めにカオスChaos(「虚空Void」)から、
タルタロスTartarusやガイアGaea(the Earth)(大地)とともに生まれた。
美術・文学において愛が格段にロマンティックなものとされたヘレニズム時代に、エロスErosのもう1つの概念、すなわち矢を一杯に詰めたえびらを持つ、翼のある子供ないしは赤子というイメージが一般的になった。
そのことから、彼の矢のあるものは先端が黄金でできていて、それで射られると激しい恋心を抱き、他の矢は先端が鉛でできていて、それで射られると、自分を恋い慕う者から心が離れてゆく、という着想が生じた。
それゆえにエロスErosは恋心を掻き立てもすれば冷ましもする、というのである。
ポントスPontus(海sea)
原初Primitiveの海神ancient sea-god
大地母神ガイアGaeaが1人で産んだ息子son
ネレウスNereus ケトCeto タウマスThaumas ポルキュスPhorcys エウリュビアEurybiaをもうけた
ニュクスNyx(夜night)
夜の女神the goddess of the night
エレボスErebus、ガイアGaea、タルタロスTartarusそしてエロスErosと同時に太古PrimitiveのカオスChaosから生まれた最初の神々the first godsの1人。
ニュクスNyxからは擬人化された力のうち最も強力でかつ恐ろしい何人かの人格神personified godsが生まれた。
すなわち
タナトスThanatos(死)、
ヒュプノスHypnos(眠り)、
モロスMoros(運命、死の定業)、
ケルKer(宿命、暗い死の運命)、
オネイロスOneiroi(夢)、
モモスMomus(不平、非難)、
ネメシスNemesis(応報、義憤)、
オイジュスOizys(痛み、苦悩)、the goddess of Misery
エリスEris(不和、争い)、
ゲラスGeras(老い)、
3人の運命の女神Three FatesであるモイラたちMoiraeほか多数である。
ニュクスNyxはこれらを男性の協力なしに産んだ。
またニュクスNyxは兄弟エレボスErebusとの間に
ヘメラHemera(昼)とアイテルAether(大気)をもうけた。
ゼウスZeusがオリュムポスOlymposからヒュプノスHypnosを追い出そうとしたとき、ニュクスNyxは息子をかばい、神々の王たるゼウスZeusでさえ譲歩しなければならなかった。
ヒュプノスHypnos(ソムヌスSomnus)(「眠りsleep」)
眠りの神the God of Sleep 眠りの擬人神the personification of sleep。
タナトスThanatos(「死death」)の兄弟で、ニュクスNyx(「夜night」)の子。
レムノス島the island of Lemnosの洞穴を住み家とする。
あるいは、キムメリオス人の住むという、世界の果ての架空の島の近くに暮らす。
そこは光が射すことはなく、つねに暗く靄(もや)mistがかかり、冥界the Underworldの忘却の川the river of forgetfulness・レテthe River Letheが流れている。
ヒュプノスHypnosは多くの息子たち・オネイロイOneiroi(「夢dreams」)に囲まれ、柔らかい寝床に眠っている。
海で死んだとも知らず夫のケユクスCeyxを待ちわびる妻・アルキュオネAlcyoneにその死を告げるため、ヘラHeraは虹の女神・イリスIrisを遣わし、ヒュプノスHypnosの息子の1人モルペウスMorpheus(「形を変える者」)をアルキュオネAlcyoneの夢枕に立たせた。
また、トロイア戦争Trojan Warのとき、ヘクトルHectorに追われ船陣にまで敗退させられるギリシア方を見るに見かねたヘラHeraは、アプロディテAphroditeの魅惑の帯を借りて身に付け、ヒュプノスHypnosに頼み込んでこっそり夫・ゼウスZeusを眠らせてもらった。
その間に、加勢するギリシア方を有利に導くようにポセイドンPoseidonに働きかけたのである。
かつてヘラクレスHeraclesを迫害しようとするヘラHeraに頼まれてゼウスZeusを眠らせたため、母のニュクスNyxにしか救うことのできない厳しい罰を受けそうになったことを思い出し、ヒュプノスHypnosは初めはヘラHeraの頼みに応じなかった。
しかし、カリテスCharites(三美神three Graces)の1人パシテアPasitheaを妻に与えるからと説得されて、ついにヒュプノスHypnosはヘラHeraの願いを聞き入れた。
彼はゼウスZeusがトロイア戦争Trojan Warを観戦するトロイアTroyのイデ山Mount Idaへ赴き、夜鷹に姿を変えて松の木にとまった。
ゼウスZeusはヘラHeraを誘って床に着くと、ヒュプノスHypnosはゼウスを静かに眠らせた。
またあるときは、トロイア戦争Trojan Warで戦死したゼウスZeusの息子・サルペドンSarpedonの遺体を故郷で埋葬するため、ヒュプノスHypnosとタナトスThanatosの兄弟がアポロンApolloに頼まれ、リュキアLyciaまで運んだ。
タナトスThanatos(「死death」)
死の人格化the personification of death
ニュクスNyx(「夜night」)の息子sonで、ヒュプノスHypnos(「眠りsleep」)の兄弟brother。
神話では、死の天使の役割を持ち、人間に割り与えられた寿命が過ぎるとその人間のもとに赴き、その髪の毛を1房切り取ってハデスHadesに献上し、それから人間を連れ去る。
彼はヒュプノスHypnosの助けを借りて、トロイアTroyの戦場からサルペドンSarpedonの死体を移したり、アルケスティスAlcestisが夫の身代りに棺に入ったとき、ペライPheraeから彼女を連れ出したりした。
後者の話をエウリピデスEuripidesが語るところでは、タナトスThanatosは、喪服を着て剣を抱いた死すべき運命にあるアルケスティスAlcestisに近づいたということである。
しかし、ヘラクレスHeraclesが彼と格闘し、彼にアルケスティスAlcestisを奪うのをあきらめさせた。
タナトスThanatosと関わったもう1人の人間にシシュポスSisyphusがいる。
彼は1度タナトスThanatosを騙したが、その罰として永遠の苦しみを味わされた。
モイライMoirae(パルカParca)
3人の運命の女神たちThree Fates。
ニュクスNyxの娘daughterたち
クロトClotho(「紡ぎ女」)(「紡ぐもの」)
ラケシスLachesis(「分け前をはかる女」)(「運命の図柄を描くもの」)
アトロポスAtropos(「免れがたい女」)(「不可避のもの」)
メレアグロスMeleagerの誕生にまつわる物語では、本来、運命の女神たちThree Fatesには人間の生を支配し、誕生の瞬間にその全生涯をも決定する役割があると言われている。
メレアグロスMeleagerが生まれて7日後、運命の女神たちthe Fates・モイライMoiraeは彼を産んだ母親の前に現れ、おりしも炉の中で燃えている薪が燃え尽きるとき、赤児は死ぬだろうと言った。
母は炉の中から燃え木を取り出し、その火を消したので、メレアグロスMeleagerは成人した。
しかし、カリュドンの猪狩りCalydonian Boar Huntの折、口論がもとでメレアグロスMeleagerが母の兄弟を殺したことを知った母は怒り、あの燃えさしの薪を再び炉の中へ投じた。
すると、メレアグロスMeleagerは突然世を去った。
古代作家たちの多くは運命の女神たちthe Fates・モイライMoiraeをオリュムポスの神々the Olympian godsよりも優位においている。
ホメロスHomerもウェルギリウスVergilius(バージルVergil)も、最高神・ゼウスZeusが運命の女神たちthe Fates・モイライMoiraeの意図を知ろうと天秤をとり、英雄たちの運命をのせた天秤のバランスがどちらに傾くか見ている様を描いている。
そうすると、ゼウスZeusは運命の決定者というよりも、定められた運命の執行人のように思われる。
たとえば、ゼウスZeusは息子のサルペドンSarpedonがトロイア戦争Trojan Warの折、パトロクロスPatroclusに殺される運命にあることを知りつつ、最愛の子の定められた運命を覆すことができない。
息子が故郷・リキュアの地で手厚く葬られるよう取り計らうばかりで、あとは、手をこまねいて見ているしかないのである。
神話の中で、運命の女神たちthe Fates・モイライMoiraeが大きな働きをすることはない。
巨人族giants・ギガンテスGigantes相手の戦いと、テュポンTyphonとの争いのときゼウスZeusに味方し、ギガンテスGigantesのアグリオスAgriusとトアスThoasを棍棒で殴り殺したり、すでにゼウスZeusに追い詰められていたテュポンTyphonに、食べれば身の細る食物を力のつく食物と偽って食べさせたりしたこと。
あるいは反対に、アポロンApolloに謀られ酒を飲まされて、アポロンApolloの友人・アドメトスAdmetusの運命を変更させられたこと、くらいのエピソードしかない。
酒に酔った運命の女神たちthe Fates・モイライMoiraeは、アドメトスAdmetusの身代わりに死ぬものがあれば、という条件で、アドメトスAdmetusが定められた寿命より長く生きることを許したのだった。
アドメトスAdmetus
テッサリアThessalyのペライPheraeの王King。
クレテウスCretheusとテュロTyroの息子son・ペレスPheresの息子son。
アルゴナウタイArgonautsの1人で、カリュドンの猪狩りCalydonian Boar Huntに加わった。
若いときに父・ペレスPheresから王位throneを譲られた。
アドメトスAdmetusは正義心justiceが強く、人を厚くもてなすhospitalityことで有名だったので、アポロンApolloがゼウスZeusに罰せられて、人間の奴隷となって1年間働くことを命ぜられたとき、見知らぬ男に変装してアドメトスのところへやって来た。
アドメトスAdmetusはアポロンApolloを非常に親切にもてなしたので、牛飼いherdsmanとして働いていたアポロンは、彼の牝牛cowsすべてに双子twinsを産ませてやった。
アポロンApolloはまた、アドメトスAdmetusがアルケスティスAlcestisを妻に求めたとき、アルケスティスAlcestisの父・ペリアスPeliasが娘の未来の夫に、ライオンlionと猪boarに戦車chariotを引かせるという難業impossible taskを課したので、その条件に合う戦車chariotを与えて彼を助けた。
アドメトスAdmetusは結婚に際してアルテミス女神the goddess Artemisに感謝の祭礼を行うことを忘れたため、婚礼の新床bridal chamberを蛇snakesだらけにされたが、アポロンApolloがアドメトスの過失を弁明して妹神sister goddessの怒りを宥めてくれたので、問題はすぐ解決した。
アポロンApolloはまた、アドメトスAdmetusの死期が迫ったとき、身代わりに死ぬ者を立てて助けようと、運命の女神たち(the Fates, Three Fates)・モイライMoiraeを騙しさえして、自分が保護するこの者に特別の恩典を与えようとした。
アドメトスAdmetusはまだ若いうちに病気になったが、死神・タナトスThanatosが彼を捕えに来たとき、最初は誰も身代わりになる者を見つけることができなかった。
老いた両親すらまだ身代わりになる心構えができていなかった。
しかし妻のアルケスティスAlcestisが進んで身代わりになると申し出た。
やがて彼女が病気になり、彼女を黄泉の国へ連れ去るため死神・タナトスThanatosがやって来た。
アドメトスAdmetusは妻の犠牲を受けるつもりであったが、その時たまたま彼の宮廷を来訪していたヘラクレスHeraclesが死神・タナトスThanatosと組み合ってこれを追い返したので、やっと彼女は救われた。
アルケスティスAlcestis
イオルコス王King of Iolcus・ペリアスPeliasとアナクシビアAnaxibiaの娘。
ペライPheraeの王・アドメトスAdmetusの妻wife。
モモスMomus(「不平blame」)
ニュクスNyx(「夜night」)の息子。
彼は神の摂理をいつも批判する者として語り伝えられることがある。
たとえばゼウスZeusが牡牛の角を、牡牛の最強部である肩でなく頭に生やさせたことで彼をなじっている。
ネメシスNemesis(「応報retribution」)
女神the goddessでニュクスNyx(「夜night」)の娘。
悪業に対する擬人神the personification of retribution。
無情な恋人を罰する者とも考えられた。
ゼウスZeusがネメシスNemesisを恋してあとを追ったとき、彼女は様々な動物や魚fishの姿をとって逃れようとした。
とうとう彼女が鵞鳥gooseになり、ゼウスZeusが白鳥swanとなった。
その時、一説によればゼウスZeusは彼女と交わり、彼女が卵eggを産むと、その卵eggはヘレネHelenになったという。
ネメシスNemesisの受胎がどのような形をとったにせよ、彼女の卵eggはそれを発見した羊飼い(ないしはヘルメスHermes)によってテュンダレオスTyndareusの妻・レダLedaのところへ持って行かれた。
それでレダLedaは卵eggから孵ったヘレネHelenを育てたのである。
しかし卵eggを産んだのはネメシスNemesisではなくレダLedaだとも言われる。