煉瓦造りの銀行 Brick Bank 2016年(平成28年)
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エレクトリュオンElectryon
ペルセウスPerseusとアンドロメダAndromedaとの息子son。
ペルセウスPerseusの跡を継いでミュケナイ王King of Mycenaeになった。
妻wife・アナクソAnaxoとの間に娘daughter・アルクメネAlcmeneと6人の息子sonを得た。
また、プリュギア(フリギア)Phrygiaの奴隷女Slave woman・ミデアMideaは彼のもう1人の息子son illegitimate son・リキュムニオスLicymniusを産んだ。
エレクトリュオンElectryonの兄弟brother・メストルMestorの子孫descendantsで、タポス諸島the islands of Taphosに住んでいたプテレラオスPterelausの6人の息子sonたちが、ミュケナイMycenaeに来て王国の分け前share of kingdomを要求した。
エレクトリュオンElectryonがそれを拒絶するとspurned their
request、彼らは彼の牛の群れを奪ったthey drove off his
cattle。
それに続く戦闘で、6人のうちの5人までが殺された。
船の番をしていたエウエレスだけが生き残り、彼は牛cattleの群れをエリス王King of Elis・ポリュクセノスPolyxenusに売り払った。
そこで、アルクメネAlcmeneと婚約engagementしていたアムピトリュオンAmphitryonは、それを買い戻してエレクトリュオンElectryonに返したが、その際アムピトリュオンAmphitryonが牛cattleの1頭に投げた棒がたまたまエレクトリュオンElectryonに当たって、彼は死んでしまった。
エレクトリュオンElectryonの兄弟brotherのステネロスSthenelusは、その跡を継いでミュケナイ王King of Mycenaeとなり、アムピトリュオンAmphitryonを殺人の罪で追放した。
Electryon's
brother Sthenelus seized the throne of Mycenae, charged Amphitryon with murder,
and sent him into exile.
ペルセウスPerseus
アナクソAnaxo
アムピトリュオンAmphitryonの姉妹sister。
アムピトリュオンAmphitryonはアナクソAnaxoの娘daughter・アルクメネAlcmeneと結婚marriageした。
アナクソAnaxoは父father・アルカイオスAlcaeusの兄弟brother・エレクトリュオンElectryonと結婚marriageした。
息子sonたちはタポス人the Taphiansに殺された。
蛇snakeを殺すヘラクレスHeraclesに驚くアムピトリュオンAmphitryonとアルクメネAlcmene。
アムピトリュオンAmphitryon
アルカイオスAlcaeusの息子sonでペルセウスPerseusの孫grandson。
母motherはペロプスPelopsの娘daughter・アステュダメイアAstydameiaともリュシディケともいう。
ペルセウスPerseusの死後、アムピトリュオンAmphitryonの叔父Uncle・エレクトリュオンElectryonがミュケナイMycenaeのアルゴリスArgolisの王Kingとなった。
アムピトリュオンAmphitryonはエレクトリュオンElectryonの娘daughter・アルクメネAlcmeneとの結婚marriageを望んだが、エレクトリュオンElectryonはタポス人the Taphiansが攻めてきて牛cattleを奪い息子sonたちを殺した敵を討つまでは結婚marriageを許さない、と言った。
しかしこの遠征に出発する前にエレクトリュオンElectryonはアムピトリュオンAmphitryonをエリスElisに送って、タポス人the Taphiansがそこに預けてあった牛cattleを取り返させた。
牛cattleを連れて帰ったアムピトリュオンAmphitryonは、牛cattleの1頭を押さえようとして手にした棒を投げたところ、過ってエレクトリュオンElectryonに当たって殺してしまった。
エレクトリュオンElectryonの兄弟brotherのステネロスSthenelusは殺人murderのかどでアムピトリュオンAmphitryonを追放し、自分がミュケナイMycenaeの王位throneについた。
アムピトリュオンAmphitryonはアルクメネAlcmeneを連れてテバイThebesに逃れ、そこで王King・クレオンCreonによって罪を浄められた。
アルクメネAlcmeneの兄弟brotherの敵はまだ討たれていなかったが、その責任はアムピトリュオンAmphitryonが負うことになり、それが遂行されるまでは彼に結婚marriageの権利を認めないとアルクメネAlcmeneは言った。
アムピトリュオンAmphitryonがクレオンCreonに助けを乞うと、クレオンCreonは条件つきで助力を約束した。
それは、ヘラHeraまたはディオニュソスDionysusが放った牝狐Female fox(テウメッサの狐the Teumessian fox)がテウメッサ地方を荒らして毎月1人の若い男を食べるので困っているが、その牝狐Female foxを追い払うという条件であった。
ライラプスLaelaps
アテナイAthínai(アテネAthens)のケパロスCephalusがライラプスLaelapsという猟犬hunting dogを持っていて、追いかけたものは必ず捕える力があるというので、アムピトリュオンAmphitryonはタポス人the Taphiansからの戦利品の分け前を与えるという交換条件でケパロスCephalusの援助を求めた。
しかしゼウスZeusが牝狐Female foxも猟犬hunting dogもともに石stoneに変えてしまった。
クレオンCreonはタポス人the Taphiansを攻めるのを援助してくれた。
そのほか味方についたのはケパロスCephalus、アムピトリュオンAmphitryonの叔父Uncle・ヘレイオスHeleius、パノペウスPanopeus、それにロクリス軍の一部であった。
遠征軍はタポスの島Taphosに向かって船を進めたが、そこではプテレラオスPterelausがタポス人the Taphiansの王Kingとなっていた。
この王Kingの頭に黄金の髪の毛golden hairがあって、これがある限り不死immortalであり、彼の治める国も落ちないことになっていた。
ところが王Kingの娘daughter・コマイトComaethoがアムピトリュオンAmphitryonに恋して父fatherの黄金の髪の毛golden hairを切り取ったので王Kingは倒れて死んだ。
ところがアムピトリュオンAmphitryonは娘daughterの愛を受け入れるどころか、裏切りbetrayalであるといって彼女を殺し、島国を味方に分け、ケパレニアCephalleniaはケパロスCephalusに、残りはヘレイオスHeleiusに与えた。
アムピトリュオンAmphitryonがテバイThebesに帰ってみると、アルクメネAlcmeneは彼の姿を見て驚いた様子もなく、なぜか前日、あるいは前夜帰国したような感じでいるので、アムピトリュオンAmphitryonは不審に思った。
その上、彼女の話によると、ついに結婚marriageは実行されたという。
テイレシアスTiresias
アムピトリュオンAmphitryonがテバイThebesに住む預言者Prophet・テイレシアスTiresiasに聞くと、老預言者Old prophetは、ゼウスZeusがアムピトリュオンAmphitryonに姿を変えてアルクメネAlcmeneと1夜を過ごしたこと、さらにゼウスZeusは、立派な英雄heroを生むために夜の長さを普通の3倍に延ばしたことなどを語った。
アムピトリュオンAmphitryonはこの説明で納得した。
アルクメネAlcmeneはやがて双子twin sonsを産んだが、その1人はゼウスZeusの子child・ヘラクレスHeraclesで、もう1人はアムピトリュオンAmphitryonの子child・イピクレスIphiclesである。
イピクレスIphiclesの方がヘラクレスHeraclesよりはるかに力が劣っていた。
アムピトリュオンAmphitryonは続いてテバイThebesに住み、娘daughter・ペリメデPerimedeが生まれた。
リュコスLycusがクレオンCreonの王位throneを奪ったとき、ヘラクレスHeraclesの一族全員を殺すと脅したが、ヘラクレスHeracles自身が帰ってきて家族を救った。
やがてヘラクレスHeraclesは気が狂って自分の子供childrenらを殺し、一説によれば妻wife・メガラMegaraも殺した。
アムピトリュオンAmphitryonをも殺そうとしたが、アテナAthenaがヘラクレスHeraclesに石stoneを投げてこれを妨げた。
ヘラクレスHeraclesが十二の難業The Twelve Laborsをしなければならなかったのはこれらの罪のためである。
アムピトリュオンAmphitryonはオルコメノスの王King of Orchomenus・エルギノスErginusとミニュアス人the Minyansを相手に戦っているときに死んだ。
アルクメネAlcmene
エレクトリュオンElectryonとアナクソAnaxoの娘daughter。
(ペルセウスPerseusの孫Grandchild。ペロプスPelopsの曾孫(ひまご)Great-grandchild)
叔父であるティリュンス王King of Tyrins・アムピトリュオンAmphitryonの妻wife。
ヘラクレスHeraclesの母mother。
アルクメネAlcmeneの兄弟brotherたちは家畜を掠奪に行ってタポス人the Taphiansに殺された。
アムピトリュオンAmphitryonが彼女と床をともにしようとしたが、彼女は兄弟brotherの復讐を先にするように命じた。
アムピトリュオンAmphitryonは家畜を取り戻したが、それをエレクトリュオンElectryonに返すときに過ってエレクトリュオンElectryonを殺してしまった。
このために彼はエレクトリュオンElectryonの兄弟brother・ステネロスSthenelusによって追放された。
アルクメネAlcmeneはアムピトリュオンAmphitryonについてテバイThebesまで行ったが、それでもなお彼がタポス人the Taphiansに罰を加えるまでは彼の恋人になろうとしなかった。
彼は軍を起こして戦いを始めた。
この騒ぎはゼウスZeusの仕業であった。
ゼウスZeusは来るべきギガンテスGigantes(巨人族Giants)との戦いに神々を救うような勇敢な人間を生ませようと思い、この英雄を産むべき最も賢明で美しい女としてアルクメネAlcmeneを選んでいたのだった。
かくして彼女はゼウスZeusの最後の人間の妾concubineになることになった。
アムピトリュオンAmphitryonが戦いから帰る日の夜、ゼウスZeusは彼女の夫husbandの姿で彼女に近づいた。
その後アムピトリュオンAmphitryon自身が帰ってきたとき、アルクメネAlcmeneがその晩すでに彼と寝たと言うので、彼はただちに何かおかしいことが起こったと知った。
預言者Prophet・テイレシアスTiresiasが真相を話して聞かせたので、アムピトリュオンAmphitryonはあきらめてそのまま結婚生活Marriage lifeを続けた。
ヘラクレスHeraclesを産むアルクメネAlcmene
アルクメネAlcmeneはヘラクレスHeraclesとイピクレスIphiclesの双子twin sonsを身ごもったが、イピクレスIphiclesだけがアムピトリュオンAmphitryonの息子sonであった。
出産birthのときが来ると、ゼウスZeusは、自分の子childである人間の支配者がまもなく生まれると神々に自慢した。
ゼウスZeusの妻wife・ヘラHeraは成り行きを察知し、ゼウスZeusがアルクメネAlcmeneの息子sonを彼女の故国Homelandの王Kingにするつもりであることを知った。
そこでヘラHeraはお産の女神goddess of
childbirth・エイレイテュイアEileithyiaを遣わしてアルクメネAlcmeneの産室delivery roomの外に座らせ、あらゆる手段でその出産birthの邪魔をさせた。
エイレイテュイアEileithyiaは指や腕や足や足の指を組むまじないをしてお産childbirthの妨害に取りかかった。
アルクメネAlcmeneがあわや息絶えんとするとき、侍女maidの1人・ガリンティアスGalanthisが大声で子供childが生まれたと叫んだ。
She announced that Alcmene had safely
delivered her child,
エイレイテュイアEileithyiaはびっくりして様子を見に行こうと立ち上がったので、呪文incantationが解けて双子twin sonsが生まれた。
オウィディウスOvidによればガリンティアスGalanthisという名のその侍女maidは、イタチweaselに姿を変えられた。
アムピトリュオンAmphitryonは妻wifeを不貞Unfaithfulのかどで焼き殺そうとしたことがあったが、ゼウスZeusが嵐を起こしたので果たさなかった。
アムピトリュオンAmphitryonの死後、アルクメネAlcmeneはクレタ島CreteのラダマンテュスRhadamanthusと結婚marriageしボイオティアBoeotiaに住んだ。
別の説では、ヘラクレスHeraclesの死後、ミュケナイMycenaeとティリュンスTyrinsの王Kingで彼を迫害したエウリュステウスEurystheusが彼女と孫GrandchildたちをアッティカAtticaに追い、彼らはマラトンMarathonに逃れた。
エウリュステウスEurystheusはアッティカAtticaを攻めたが、戦いに敗れて捕らえられた。
アルクメネAlcmeneは彼の死を要求した。
彼女自身が死んだとき、棺の中に彼女の死体の代わりに大きな石が置かれ、彼女はヘルメスHermesによって幸福の島Island of happinessに運ばれ、そこで冥府Underworldの裁判官judgeになっていたラダマンテュスRhadamanthusの妻wifeとなった。
天の川の起源The Origin of the Milky Way
ヘラクレスHeraclesの母mother・アルクメネAlcmeneはヘラHeraの嫉妬jealousyを恐れ、生まれたばかりの赤子babyを野に捨てた。
しかしヘラHeraがこの近くを通ったとき、お供をしていたアテナAthenaは赤子babyを発見してその資質に驚異を感じ、赤子babyに母乳milkを与えるようにとヘラHeraに頼み込んだ。
しかしヘラクレスHeraclesが赤子babyとは思えない力でヘラHeraの乳房breastをつかんだので、あまりの痛さに女神Goddessは赤子babyを突き放したが、赤子babyが母乳milkを飲むのを見たアテナAthenaは、彼をアルクメネAlcmeneのもとに連れて行き、育てるよう勧めた。
いくつかの文献は天の川の起源The Origin of the
Milky Wayがこのエピソードにあると主張している。
それによるとヘラクレスHeraclesに乳milkを与えるため、ヘルメスHermesは彼を眠っているヘラHeraの寝所に行って吸わせた。
しかし吸う力があまりに強く、ヘラHeraは激痛で目を覚まし、ヘラクレスHeraclesを払いのけたので、たくさんの母乳milkがこぼれ、天の川Milky Wayになった。
エウリュステウスEurystheus
「あまねく強者broad strength」の意。
ステネロスSthenelus(ペルセウスPerseusの息子son)とニキッペNicippe(ペロプスPelopsの娘daughter)もしくはメニッペとの息子son。
(ペルセウスPerseusの孫grandson。ペロプスPelopsの孫grandson。)
ミュケナイMycenaeやティリュンスTyrinsを含むアルゴリスの王King of Argolis。
ヘラクレスHeraclesの最も非情なる敵であり、ヘラクレスHeraclesは彼の奴隷slaveとして十二の難業The Twelve Laborsを遂行した。
その理由は以下の如くである。
ゼウスZeusの卓越した人間の息子sonであるヘラクレスHeraclesがアルクメネAlcmeneのもとに生まれる少し前に、ゼウスZeusの妻wife・ヘラHeraは、すべての英雄たちheroesの中で最も偉大な者の誕生に関わりあえないことを嫉妬jealousyして、その赤児babyに生まれたときから約束されているアルゴリスArgolisの支配権dominionを奪おうと決意した。
ゼウスZeusは神々Godsを前にして、ヘラクレスHeraclesの誕生birthが差し迫っているとつい口をすべらせ、その日こそ、ゼウスZeus自身の血族の人間が女から生まれ、やがて周りに住む人々を支配するようになる、と誇らしげに言った。
しかしながら、ステネロスSthenelusの妻wife・ニキッペNicippe(あるいはメニッペ)がたまたまその時7か月の身重であり、ステネロスSthenelusはペルセウスPerseusの子childであったので、彼の息子sonもヘラクレスHeraclesと同等にゼウスZeusの予言Prophecyを満たす資格rightがあった。
しかも、アムピトリュオンAmphitryonが、ミュケナイMycenaeの前王Former kingでステネロスSthenelusの兄弟brotherのエレクトリュオンElectryonを過って殺したあと、ステネロスSthenelusが王位throneを手中に収めていた。
猫(ねこ)Cat
そこでヘラHeraは、出産の女神goddess of
childbirth・エイレイテュイアEileithyiaの助けを借りて、エウリュステウスEurystheusの誕生birthを早め、アルクメネAlcmeneの出産childbirthを遅らせた。
侍女maidのガリンティアスGalanthisが策略によって女神goddessの計画を欺いたため、アルクメネAlcmeneはヘラクレスHeraclesを出産childbirthしたが、時すでに遅く、ヘラクレスHeraclesはゼウスZeusの予言Prophecyを満たすことができなかった。
このようにしてエウリュステウスEurystheusはアルゴリスArgolisの王位throneを継承した。
そして、ヘラクレスHeraclesが狂気の発作Crazy seizuresのなかで妻wifeのメガラMegaraと子供childrenたちを殺したとき、デルポイの神託the Delphic oracleは彼に、エウリュステウスEurystheusの奴隷slaveになること、そして奴隷slaveのままで10(あるいは12)の難業Laborsを達成することを命じたのだった。
エウリュステウスEurystheusはヘラクレスHeraclesの力と彼のアルゴリスArgolis王位throneへの権利とを妬んで、彼に、ゼウスZeusの本当の息子sonでゼウスZeusに愛されている者でなければとうてい果たし得ないような、いくつかの困難な仕事を課した。
エウリュステウスEurystheusは臆病な男Cowardly manだった。
たとえば、ヘラクレスHeraclesがネメアのライオンthe Nemean Lionの毛皮skinを彼のところに持って行ったとき、彼は青銅の貯蔵壺bronze winejarの中に隠れてしまった。
その後彼はヘラクレスHeraclesに、彼の市(それがティリュンスTyrinsであるかミュケナイMycenaeであるかは定かでない)に入ることを禁じ、叔父Uncleで伝令使heraldのコプレウスCopreusを通じて、彼に指示を与えた。
エウリピデスEuripidesの戯曲Drama『ヘラクレスの子供たちHeracleidae』においては、彼は臆病者Cowardly manというよりは、残酷な人間Cruel humanとして描かれている。
ヘラクレスHeraclesがオリュムポスOlympusに上がったあとも、エウリュステウスEurystheusは彼の子供childrenたちを苦しめることによって、彼への迫害persecutionを続行した。
トラキスTrachis王King・ケユクスCeyxは、ヘラクレスHeraclesの子供childrenたちを保護することを拒んだ。
猫(ねこ)Cat
というのは、エウリュステウスEurystheusが彼を攻撃し、子供childrenたちの引き渡しを要求していたからである。
そこで子供childrenたちはアッティカAtticaへ逃げた。
この地で、テセウスTheseusの息子son・デモポンDemophonが彼らをマラトンMarathonに住まわせ、またエウリュステウスEurystheusとの戦闘にも勝利を得た。
エウリュステウスEurystheusたちがアッティカAtticaから逃げるところを、ヘラクレスHeraclesの息子son・ヒュロスHyllusが追いすがり、コリントス地峡the Isthmus of Corinthのスケイロニスの岩でこれらの迫害者たちを殺した。
他の説によれば、エウリュステウスEurystheusは生け捕りにされたが、アルクメネAlcmeneの命令で、アテナイの人々the Atheniansの反対にもかかわらず、殺されたという。
アテナイの人々the Atheniansが彼の生命を救おうと努めたので、エウリュステウスEurystheusは彼らに感謝して、自分は死体になってもアテナイAthínai(アテネAthens)の地を侵略から守ると約束した。
そこで彼らは、彼の死体を国境地方に埋葬した。
ヘラクレスHeracles(ヘルクレスHercules)
ギリシア神話Greek mythology最大の英雄hero。
半神Demigod。
最も人気が高く有名である。
ゼウスZeusとアルクメネAlcmeneとの息子son。
(ペルセウスPerseusの曾孫(ひまご)Great-grandchild。
ペロプスPelopsの玄孫(やしゃご)great‐great‐grandchild)
ヘラクレスHeraclesの名は文字通りには「ヘラの栄光」という意味であるが、おそらくは「ヘラからの栄光ある贈り物」の意だったのであろう。
ヘラHera崇拝の中心地・アルゴスArgosがヘラクレスHeraclesと関係の深い都市と考えられるのは、こうした関連からである。
しかしヘラクレスHeraclesを産んだ母親motherに対する嫉妬jealousyから、ヘラHeraが執拗に英雄heroを迫害persecutionする神話は、この関連と矛盾するようである。
アルゴスArgosに対抗して、テバイThebesも古くから英雄heroと自分たちの都市を結びつけようとしており、ここでは英雄誕生の地については、テバイ説をとった。
ゼウスZeusは当初、ヘラクレスHeraclesをアルゴス王King of Argosに、あるいは少なくとも、ミュケナイMycenaeとティリュンスTyrinsの王Kingにと考えていたが、ヘラHeraの策謀により、この計画は実現しなかった。
結局、ヘラクレスHeraclesは偉大な王Great kingになりそこねたばかりか、卑劣な男Sneaky man・エウリュステウスEurystheusに仕える奴隷slaveの身となった。
しかし、幾多の試練を乗り越えたあとは、神々Gods対ギガンテスGigantesの戦い(ギガントマキアGigantomachy)において、神々Godsの側につき、巨人族Giantsを征服して神々Godsを救う運命Fateにある。
ヘラクレスHeraclesは誕生後After birthすぐに、偉大なゼウスZeusの子childであることを示した。
生後8か月 eight months oldになったある日、双子の兄弟Twin brotherのイピクレスIphiclesと一緒に揺り籠children's chamberがわりの丸い楯の中で眠っていた。
夜も更けたころ、ヘラクレスHeraclesを殺そうとしたヘラHeraが、揺り籠children's chamberの中に蛇snakeを2匹ほうり込んだ。
イピクレスIphiclesが最初に気付き、叫び声をあげた。
しかし、ヘラクレスHeraclesは平然と蛇snakesを両の手に1匹ずつ掴み、鎌首goose-neckを握って絞め殺したstrangled。
騒ぎに驚いて両親parentsが駆け付けたが、父親fatherのアムピトリュオンAmphitryonはすぐに、どちらがゼウスZeusの子childであるかを知った。
アムピトリュオンAmphitryon自身が、2人の子供childrenの素姓を確かめようとして、蛇snakesを投げ入れた、とする説もある。
ヘラクレスHeraclesの教育には、多くのその道の達人があたった。
アムピトリュオンAmphitryonは馬術と戦車を御す術を、オイカリアの王・エウリュトスEurytusは弓術を、アウトリュコスAutolycusは格闘術を、ポリュデウケスPolydeucesはフェンシングを教えた。
楽人・オルペウスOrpheusの兄弟brotherのリノスLinusは音楽musicを担当し、竪琴lyreを教えた。
しかし、不器用なヘラクレスHeraclesはなかなか上達しない。
ついリノスLinusは彼を叱ることになるが、ある日、カッとなったヘラクレスHeraclesは竪琴lyreで師の頭を打ち砕いてしまった。
年端も行かぬ少年だったが、ヘラクレスHeraclesは殺人罪Murderで訴えられた。
それでも、正当防衛Self-defenseは罪に問わず、とするクレタ島Creteの立法者であり死後は冥界the Underworldの裁判官judgeをしているラダマンテュスRhadamanthusの法を引用して、堂々と法廷で無罪を勝ち取った。
このような事が2度と起こらないように、アムピトリュオンAmphitryonは少年にテバイThebesに近いキタイロン山Mount Cithaeronで、羊飼いshepherdの暮らしをさせた。
その地で、彼は急速に成長し、背は高くなかったが(と、ピンダロスPindarは言う。しかし後代では、堂々たる偉大夫とされた)、強健な、力あふれる逞しい若者になった。
弓を好み、格闘に強く、槍の名手でもあった。
父fatherの家畜livestockをはじめ、隣国テスピアイThespiaeの王King・テスピオスThespiusの家畜livestockも荒らしていたキタイロン山Mount Cithaeronのライオンlionを素手でwith bare hands退治したのは、17歳のときだった。
(キタイロンのライオンthe Cithaeronian lion)(the Lion of
Cithaeron)
(これは、アムピトリュオンAmphitryonの父father・アルカイオスAlcaeusの手柄とする説もある。)
ライオン狩りLion huntingのためにヘラクレスHeraclesがテスピオスThespius王Kingの城を訪れたとき、王Kingは彼を歓待し、娘daughterと寝床をともにさせた。
50日の間、彼を引き留め、50人の娘fifty
daughtersを1人ずつ、毎晩彼の寝室へしのばせたとする説もある。
パウサニアスPausaniasは、1夜のうちに50人の娘fifty
daughtersと交わったと伝えている。
ヘラクレスHeraclesは酩酊状態だったため、1人の娘daughterと50回交わったと考えた。
やがて、50人の娘たちfifty daughtersはそれぞれヘラクレスHeraclesの息子sonを産んだ。
キタイロン山Mount Cithaeronのライオン狩りLion huntingを終えてテバイThebesへ帰る途中、テバイへ年貢tributeを取り立てに行くオルコメノスOrchomenusのミニュアス人the Minyansの王King・エルギノスErginusの使者たちemissariesに出会った。
これは、テバイThebesで父father・クリュメノスClymenusを殺されて怒ったエルギノスErginusがテバイを攻め、テバイ人the Thebansから武器をことごとく取り上げ、毎年、貢ぎ物tributeを納めるよう強いていたものである。
留守にしていた間の生まれ故郷Hometown・テバイThebesの屈辱Humiliationを知ったヘラクレスHeraclesは激怒した。
使者たちemissariesを捕え、彼らの耳と鼻を切り取り、それらを縄で彼らの首にくくりつけて年貢tribute代わりとし、エルギノスErginusに送り返した。
そのあとアテナ女神the goddess Athenaから武具を授けられて、進軍してきたエルギノスErginusを討ち、ミニュアス人the Minyansを敗走させた。
テバイThebesの民は、かつて祖先が神々の神殿に奉納していた武器をとり、ヘラクレスHeraclesを助けてともに戦った。
エルギノスErginusを討ったヘラクレスHeraclesはオルコメノスOrchomenusを包囲し、夜陰に乗じて1人城壁に登り、エルギノスの城を焼き払った。
そして、オルコメノスOrchomenusには、テバイThebesに課せられていた2倍の年貢tributeを強要した。
メガラMegara
1度は、ヘラクレスHeraclesをエルギノスErginusに引き渡そうとしたテバイ王King of Thebes・クレオンCreonであったが、ヘラクレスHeraclesの武勲をたたえ、褒美として娘daughterのメガラMegaraを彼に与えた。
メガラMegaraはヘラクレスHeraclesの3人の息子son・テリマコス、クレオンティアデス、デイコオンを産んだ。
ヘラクレスHeraclesの双子twinの異父兄弟half-brother・イピクレスIphiclesにも、アルカトオスAlcathousの娘daughter・アウトメドゥサAutomedusaとの間に、やがてヘラクレスHeraclesのよき従者attendantとなるイオラオスIolausが生まれた。
ヘラクレスHeraclesがアムピトリュオンAmphitryonの故郷Hometown・アルゴスArgosに居を定めるべく出かけてテバイThebesを留守にしている間に、王King・クレオンCreonは没し、テバイThebesはエウボイアEuboeaのリュコスLycusに奪われていた。
一般にはクレオンCreonはリュコスLycusに殺されたと言われる。
僭主tyrant・リュコスLycusには、クレオンCreonの娘daughter・メガラMegaraとその子供childrenたちの存在を恐れ、彼らを亡き者にしようとしたが、そこへ思いがけずヘラクレスHeraclesが帰国した。
ヘラクレスHeraclesはリュコスLycusを殺したが、喜びの祝賀のさなか、ヘラHeraが突然ヘラクレスHeraclesに狂気madnessを吹き込んだため、狂ったヘラクレスHeraclesは弓をとると、3人の息子sonと、自ら楯となって子供childrenたちを守ろうとしたメガラMegaraを殺してしまった。
つづいて養父Foster father・アムピトリュオンAmphitryonを殺そうとしたが、アテナ女神the goddess AthenaがヘラクレスHeraclesの胸を打って気絶させたため、アムピトリュオンAmphitryonは救われた。
イピクレスIphiclesの子供childrenたちもイオラオスIolausを除いて全員が殺された、とする説もある。
しかし、アポロドロスApollodorusでは、メガラMegaraは殺されずに、のちにヘラクレスHeraclesの甥nephewのイオラオスIolausと結婚marriageしたことになっている。
より一般的なヘラクレスHeracles物語では、ヘラクレスの十二の難業The Twelve Labors of Herculesは妻子Wife and childを殺害murderしたことに起因すると説明されている。
殺人者murdererに対する法に従ってテバイThebesを去った英雄heroは、古い友人であるテスピオスThespius王Kingのもとへ逃れた。
王Kingから罪を浄める儀式を受けたが、それでもヘラクレスHeraclesは安息を見出すことができない。
そこでデルポイの神託the Delphic oracleを仰ぐと、ティリュンスTyrinsへ行き、領主・エウリュステウスEurystheusの命ずる幾つかの仕事を行うようにとの託宣oracleが下りた。
難業Laborsの数は12とされているが、古代の語り手たちは、12のうちの2つは、満足のいく偉業ではないという理由からエウリュステウスEurystheusが認めなかった、と伝えている。
そこで、一般には、ヘラクレスHeraclesは本来は10の仕事をするように命じられたと考えられている。
(あるいは、エウリュステウスEurystheusに仕えた歳月が、12年間と考えられることもある。)
一説によれば、ヘラクレスHeraclesという名は、(ヘラHeraの怒りを鎮めようとするためであろうが)、このとき初めて、デルポイDelphiの巫女priestessによって名づけられたという。
それまでは、アムピトリュオンAmphitryonの父father・アルカイオスAlcaeusの名から、アルキデスAlcidesと呼ばれていたのである。
デルポイDelphiの巫女priestessは、それらの難業Laborsを成し遂げれば、神々Godsの仲間入りが許されて不死性Immortalが与えられるとも告げた。
しかし、誇り高い英雄heroにとり、エウリュステウスEurystheusの奴隷slaveとして命じられるままに仕事を行うという屈辱Humiliationは耐え難いものだった。
なぜならエウリュステウスEurystheusは度量の狭いnarrow-minded卑劣漢bastardであるばかりか、ヘラクレスHeraclesに予定されていた王座throneに運よく横すべりして座り込んだ男、と英雄heroは考えていたに違いないからである。
なかには、ヘラクレスHeraclesの狂乱madnessと妻子殺しKilling wife and childは、エウリュステウスEurystheusに仕えよと命じたデルポイの神託the Delphic oracleに起因する、という説もある。
ダイナー Diner 2018年(平成30年)
食堂車に似た道路沿いの簡易食堂 1950年代スタイル
ダイナー Diner 2018年(平成30年)
十二の難業The Twelve Labors
1番目の難業the First Labor
ネメアのライオンthe Nemean Lion
まず最初にエウリュステウスEurystheusから退治slayするように命じられた怪物monsterは、ネメアNemeaの谷valleyに住むライオンLionだった。
これは、月の女神Moon goddess・セレネSeleneが乳milkを与えた不死身Immortalの怪物Monsterで、オルトロスOrthrus(あるいはテュポンTyphon)とエキドナEchidnaを両親parentsとして生まれたと言われる。
この怪物monsterをアルゴリス地方ArgolisネメアNemeaに送り込んでおいたのは、ヘラクレスHeraclesに危害を加えようとするヘラHeraである。
途中、ヘラクレスHeraclesはクレオナイCleonaeへ立ち寄り、モロルコスMolorchusという名の貧しい農民の小屋に1夜の宿を借りた。
モロルコスMolorchusは客人に敬意を表し、所有する唯一の牡羊ramを捧げたいと申し出た。
ヘラクレスHeraclesはそれを1か月待つように制し、次のように命じた。
自分はこれからネメアのライオン退治to slay the Nemean lionに出かけるが、もし1か月経っても戻らなかったら、自分を英雄heroとみなしてその羊ramを捧げて欲しい。
晴れて怪物monsterを退治slayして帰ったときはそれを救い主・ゼウスZeusに捧げて欲しいと。
ある日の夕方、山中で腹をいっぱいに満たしたライオンlionに出くわした、ヘラクレスHeraclesは待ち伏せして矢arrowsを放った。
しかし、アポロンApolloから贈られたその矢arrowは、ライオンlionの脇腹に当たったものの、すぐに跳ね返ってしまった。
襲いかかるライオンlionを相手に、ヘラクレスHeraclesはオリーヴの枝で作った棍棒clubをふるって闘った。
棍棒clubが折れたあとは素手でwith bare handsある。
ついに猛獣fierce animalを打ちのめし、息の根をとめ、全身の皮skinを剥いだ。
獣Beastの鋭い爪clawsがナイフ代わりだ。
以後、ヘラクレスHeraclesはその毛皮skinを肩からかけて身にまとい、常の衣服clothesとした。
ゼウスZeusはヘラクレスHeraclesの武勲を記念して、このライオンlionを天空の星(星座constellation)に加え、獅子座(ししざ)Leo(the Lion)とした。
獅子座(ししざ)Leo(the Lion)
英雄heroがクレオナイCleonaeに戻ったのは、なかなか帰らぬ英雄heroを死んだものと思い、モロルコスMolorchusが約束の羊ramを犠牲にしようとするときだった。
ティリュンスTyrinsのエウリュステウスEurystheusのもとに着き、ライオンlionの毛皮skinを差し出すと、王Kingは毛皮skinの恐ろしさに震えあがり、地中に置かれた青銅の甕bronze winejarに隠れてしまった。
以後、ヘラクレスHeraclesが獲物Preyを退治slayして帰るたびに、王Kingは直接それを見ることを恐れ、獲物Preyは町はずれoutside the city gatesに置くように命じて自分は甕winejarのなかに身を隠した。
そのためヘラクレスHeraclesの次にすべき仕事laborsの命令は、伝令使herald・コプレウスCopreusを通じて伝えられた。
レルネのヒュドラthe Lernean Hydra
2番目の難業the Second Labor
レルネのヒュドラthe Lernean Hydra
次に退治slayする怪物monsterは、ネメアのライオンthe Nemean Lionと同じくエキドナEchidnaとテュポンTyphonの子供childで、アルゴスArgos近郊のレルネLerneの沼沢地帯swampアミュモネの泉the spring of Amymoneに住む水蛇water snakeだった。
胴体bodyは犬dogの体をし、頭headは5個から100個あると言われ、後代の伝説では、そのうちの真中の1つは不死身Immortalとされた。
ヒュドラHydraをこの地に送り込んだのも、もちろんヘラHeraの仕業であるが、今度はヘラクレスHeraclesの格闘の邪魔をして気を散らすようにと大きな蟹large crabの化け物monsterも送り込まれていた。
ヘラクレスHeraclesがヒュドラHydraの頭headを斬るdecapitateと、そこから新しく2つの頭headが生え出したが、甥nephewのイオラオスIolausが手伝って、燃え木blazing firebrandでその付け根neck stumpsを焼き尽くしscorch、新しく頭headが生え出ないようにした。
イオラオスIolaus
最後に残った不死身の頭immortal headも斬り落としcut off、レルネLerneからエライオスElaiusへ通る道の地中に深く埋め大きな岩great rockをその上に置いた。
そのあと、蛇snakeの胴体bodyを裂き、胆汁bileの毒poisonを取り出し、それに自分の矢arrowsの先を浸して毒矢Poison arrowを作った。
(結果的には、この矢arrowsで英雄hero自身の破滅がもたらされることになる。)
ヘラクレスHeraclesが足で潰した例の蟹crabは、英雄heroを支援するアテナ女神the goddess Athenaに対抗したヘラHeraが、蟹crabの名誉をたたえようと天に迎え(星座constellation)、獅子座(ししざ)Leo(the Lion)の隣りに座を占める蟹座(かにざ)Cancer(the Crab)とした。
蟹座(かにざ)Cancer(the Crab)
このレルネのヒュドラ退治destroy the Lernean Hydraは、他人の助けを借りて成し遂げたものでヘラクレスHeracles1人の仕事ではない、という理由から、エウリュステウスEurystheusは難業Laborsの1つとして認めなかった。
3番目の難業the Third Labor
ケリュネイアの鹿the Ceryneian Hind
3番目の獲物Preyは、生け捕りにしてエウリュステウスEurystheusのもとへ届けられたか、あるいは、殺されて差し出されたか、説が分かれる。
エウリピデスEuripidesによれば、その牝鹿hindは近隣を荒らす厄介物で、ヘラクレスHeraclesが退治slayしてアルテミス女神the goddess Artemisに捧げたという。
他の説では、ヘラクレスHeraclesに1年追い続けられ、疲れ切ったところを生け捕りにされたという。
黄金の角golden antlersを持ち、アルテミス女神the goddess Artemisに属する神聖な獣sacred animalで、女神goddessの戦車Chariotを引く4頭のうちの1頭だった。
ピンダロスPindarによると、この牝鹿hindは、アルテミスArtemisがゼウスZeusから守ろうとして姿を変えさせたプレイアデスPleiadesの7人姉妹の1人・タユゲテTaygeteである。
この牝鹿hindを追って英雄heroは、ヒュペルボレイオイ人the Hyperboreansの住む極北の果てまで行ったとピンダロスPindarは言う。
他の説では、牝鹿hindはアルゴリス地方Argolisのオイノネの森に住んでいたという。
なぜケリュネイアの鹿the Ceryneian Hindと呼ばれるかは定かでないが、紀元前3世紀の詩人カリマコスCallimachusによれば、ヘラクレスHeraclesを試そうとするヘラHeraが1頭だけをケリュネイアKeryneiaの山中に放しておいたため、その名がついたという。
ヘラクレスHeraclesはこの牝鹿hindをアルカディア地方Arcadiaのラドン川the River Ladon近くまで追い、そこで鹿hindが眠っている隙を見て大きな網で生け捕った。
獲物Preyを運んでいるとき、アポロンApolloとアルテミスArtemisに出会ったが、2神は聖獣sacred animalを生け捕ったことを責め、すぐにその場に放つよう命じた。
しかし、捕獲はエウリュステウスEurystheusの命令であると説明すると、女神goddessはそれをティリュンスTyrinsまで連れ帰ることを許した。
エウリュステウスEurystheusに差し出されたあと、牝鹿hindは無傷のまま放たれた。
4番目の難業the Fourth Labor
エリュマントスの猪the Erymanthian Boar
次はアルカディア地方Arcadiaエリュマントス山Mount Erymanthos中に住み、山から出て来てはプソピスの市に害を加えていた巨大な野猪giant
wild boarを生け捕る仕事だった。
英雄heroはこの猪boarを探してポロエの市を通ったとき、そこに住むケンタウロス族centaursのポロスPholusに歓待された。
しかし、それはポロスPholusにとっても仲間のケンタウロスたちcentaursにとっても不幸な結果になった。
ポロスPholusは強制されて酒壺jar of wineをあけたが、ふだん酒wineに飲み慣れない他のケンタウロス族centaursが匂いsmellにつられてポロスの住む洞穴cavernに集まり、酔ってヘラクレスHeraclesと格闘になったのである。
この酒wineはケンタウロス族centaursの共有物で、ポロスPholusの一存で壺jar of wineをあけることは許されなかった。
ヘラクレスHeraclesはヒュドラHydraの胆汁bileに浸した毒矢poisonous arrowsを放って、多くのケンタウロスたちcentaursを殺害した。
この殺戮を免れたケンタウロス族centaursの1人が、のちにヘラクレスHeraclesに死をもたらすネッソスNessusである。
このあと、ヘラクレスHeraclesは猪boar退治にかかった。
彼は、猪boarのねぐらの外で大声で叫びつつ猪boarを追い出し、深い雪のなかに飛び出したところを網を投げて捕えた。
肩に担いでエウリュステウスEurystheusの城へ持ち帰ったが、このときも王Kingはあわてふためいて地中の青銅の甕bronze winejarに隠れたという。
黄金の羊の毛皮the Golden Fleeceを求めてコルキスColchisへ遠征するイアソンJason一行にヘラクレスHeraclesが加わったのは、この時である。
ヘラクレスHeraclesがあまりに傑出した英雄heroであったこと、それでいて隊長Captain・イアソンJasonの従者であったことなどが原因して、彼の存在は一行から浮き上がっていた。
途中でヘラクレスHeraclesがこの冒険から脱落したのは、おそらくそのためであろう。
しかし、別の説では、ヘラクレスHeraclesは隊長Captainに推されたが、彼はそれを断りイアソンJasonに譲ったともいう。
この遠征でヘラクレスHeraclesが果たした役割についても諸説がある。
ゼウスZeusの聖地ドドナDodonaから伐り出された樫の木で作られ、人の言葉を話すアルゴ船the Argoの船首prowが、ヘラクレスHeraclesの体重はこの船には重すぎると予言したため、初めから彼は乗船しなかった、とする説もある。
しかし、最も信頼される作品の1つである、ロドス島のアポロニオスApollonius of Rhodesの『アルゴ船遠征物語the Argonautica』では、ヘラクレスHeraclesは遠征に加わっている。
ヒュラスHylas
彼は、ドリュオプス人Dryopsの王King・テイオダマスTheodamasを殺し、その息子son・ヒュラスHylasを伴って、パガサイの海港から一行の仲間入りをした。
レムノス島the island of Lemnosに立ち寄ったアルゴナウタイthe Argonautsは、父や夫や兄弟など男たちを皆殺しにして女護が島になっていた島の女たちに引き留められ、惑溺のうちに1年の月日を無為に過ごした。
そのとき、一行に航海を続けるよう説得したのが、ヘラクレスHeraclesだった。
小アジアAsia MinorのミュシアMysiaに着き、そこでドリオニア人the Dolioniansに危害を加えていたギガンテスGigantesも、ヘラクレスHeraclesが退治した。
しかし、そのあと、ビテュニアBithynia沖で自分のオールoarを折ってしまったことが、ヘラクレスHeraclesの不運の始まりだった。
新しいオールoarを作ろうと木を伐っている間に、一緒に連れてきた従者のヒュラスHylasが泉に水を汲みに出かけたまま、彼の美しさに魅せられた泉の妖精naiadたちに水底に引き込まれたのである。
アルゴナウタイthe Argonauts一行は一晩中ヒュラスHylasを捜したが見つからない。
やむなく、カライスCalaisとゼテスZetesの助言に従い、ヘラクレスHeraclesをその地に置き去りにし、翌朝出帆してしまった。
ヘラクレスHeraclesは、土地の人間に毎年必ずヒュラスHylas捜し行うようにと命じ、自らはやがて捜索を断念した。
アルゴナウタイthe Argonautsの1人ポリュペモスPolyphemusは、ヒュラスHylasの叫び声を聞いたため、ヘラクレスHeraclesと一緒に捜索に残ったが、その地にキオスの市the city Ciusを建設して、ヘラクレスHeraclesが去ったあともヒュラスHylas捜しが続けられるように面倒をみた。
ヘラクレスHeraclesは、カライスCalaisとゼテスZetesをテノス島で捕まえ、殺害して、自分1人を置き去りにした恨みを晴らした。
Heracles
rerouting the rivers Alpheus and Peneus, to clean out the Augean stables.
5番目の難業the Fifth Labor
アウゲイアスの家畜小屋the Augean Stables
太陽神Sun god・ヘリオスHeliosの息子son・アウゲイアスAugeasは、父fatherと同様、エリスElisの国に多数の家畜livestockを所有していた。
しかし、家畜小屋Stablesはすでに長い年月一度も掃除clean upをされたことがないため、糞dungが山積みして使用不可能となっていた。
ヘラクレスHeraclesの5番目の仕事the Fifth Laborは、その小屋Stablesを1日で清掃clean upすることだった。
奴隷slaveの身であることを隠してヘラクレスHeraclesはアウゲイアスAugeasと取り引きをした。
1日で掃除clean upをし終えるから、その代わり、アウゲイアスAugeasの家畜livestockの10分の1を礼として自分に与えよというものである。
証人には、アウゲイアスAugeasの息子sonのピュレウスPhyleusがなった。
ヘラクレスHeraclesは小屋Stablesの壁に幾つかの穴holeをぶち抜き、アルペイオス川the river Alpheusの流れをその穴holeから小屋Stablesのなかへ引いて、清掃clean upを終え、暗くならないうちに穴holeをすべて封じ、川riverの流れをもとに戻した。
小屋Stablesはすっかりきれいになったが、アウゲイアスAugeasは、その仕事がエウリュステウスEurystheusの命令によるものだと知り、それを理由に約束を果たさなかった。
父fatherの不実insincerityをなじったピュレウスPhyleusは国外へ追放された。
ティリュンスTyrinsへの帰途、ヘラクレスHeraclesはオレノスOlenusの王King・デクサメノスDexamenusに歓待された。
返礼に、ケンタウロス族centaursのエウリュティオンEurytionに結婚marriageをせがまれて困惑している王Kingの娘daughter・ムネシマケMunesimacheのために、エウリュティオンEurytionを退治した。
ティリュンスTyrinsへ帰ると、ヘラクレスHeraclesは再び騙されたことを知った。
この仕事も報酬を求めて行ったものであるから、難業Laborsの1つとは認められない、とエウリュステウスEurystheusが言い放ったのである。
ヘラクレスHeraclesはのちにエリスElisの国を訪れ、さまざまな困難を経て、ついに国を征服してアウゲイアスAugeasを殺し、国を追放されていた王子princeのピュレウスPhyleusを戻して新しい王Kingとした。
6番目の難業the Sixth Labor
ステュムパリデスの怪鳥the Stymphalian Birds
ペロポネソス半島Peloponnese peninsulaでの難業Laborsはこの6番目の仕事the Sixth Laborが最後だった。
アルカディアArcadiaのステュムパロス湖Lake Stymphalus畔の森Forestに住み、先が青銅bronzeでできた翼Wingをひろげて行き交う人々を襲い、近隣の田畑を排泄物を落として荒らしている猛禽Bird of prey退治である。
アテナ女神the
goddess AthenaがヘパイストスHephaestusに作らせた騒々しい鳴り物を使って、ヘラクレスHeraclesはそれらの無数の鳥を一掃した。
ガラガラという物音に脅え隠れ場所から一斉に飛び立ったところを、ヒュドラHydraの毒矢poisonous arrowsで射殺したのである。
7番目の難業the Seventh Labor
クレタの牡牛the Cretan Bull
今度の仕事Laborははるかクレタ島Creteまで出かけなくてはならなかった。
クレタ島の王King of Crete・ミノスMinosがポセイドンPoseidonに捧げるべき牡牛Bullを惜しんだために、王妃QueenのパシパエPasiphaeがその牡牛Bullに欲情を抱いて交わった、といういわくある牛Bullを捕獲captureするためである。
その牡牛Bullは狂暴でもあったため困り切っていたミノス王King Minosは、ヘラクレスHeraclesの仕事に積極的な協力こそしなかったが、邪魔だてはしなかった。
ヘラクレスHeraclesは牛Bullを生け捕り、ティリュンスTyrinsへ連れ帰ったあと、解放した。
放たれた牛BullはマラトンMarathonへ行き、そこでのちにミノスMinosの息子sonでパロス島Parosの王King・アンドロゲオスAndrogeusを殺した。
最後は、テセウスTheseusに捕えられて殺された。
8番目の難業the Eighth Labor
ディオメデスの雌馬the Mares of Diomedes
今度はトラキアThraceへ出かけた。
ビストン人the Bistonesの王King・ディオメデスDiomedesが飼っている人間の肉を食う牝馬four man-eating Maresを捕えるためである。
ペライの王King・アドメトスAdmetusの歓待を受け、王Kingの妻wife・アルケスティスAlcestisを救ったのは、このトラキアThraceへ向かう途中、テッサリアThessalyを通ったときのことである。
アルケスティスAlcestisは夫husbandの身代わりとなって死に、墓へ入ろうとしていたが、ヘラクレスHeraclesは迎えにやって来た死神The Grim Reaper・タナトスThanatosと格闘して彼女を奪い返したのだった。
トラキアThraceへ入り、こっそり牝馬mareを盗み、海路で帰途につこうとするとき、ディオメデスDiomedesに気付かれ、ビストン人the Bistonesに攻撃された。
しかし、ヘラクレスHeraclesは彼らを撃退し、王Kingを捕え、人間の肉を食う牝馬four man-eating Maresたちの餌食とした。
荒馬mareたちは以後おとなしくなった。
だが馬mareの世話を任せていた若い友人・アブデロスAbderusが馬mareに食われ犠牲となってしまったために、英雄heroはその思い出に、アブデラの市Abderaを建設した。
牝馬mareたちはティリュンスTyrinsへ連れて行かれ、エウリュステウスEurystheusの前に差し出されたあと、放たれた。
しかし、故郷トラキアThraceを目指して北へとさまよううちに、オリュムポスOlympusと呼ばれる山中で野獣wild beastに襲われ、殺された。
(ヘラクレスHeraclesがアルゴナウタイthe Argonautsの遠征に加わったのは、この8番目の難業the Eighth Laborのときとする説もある。)
アマゾンたちthe Amazonsの女王Queen・ヒッポリュテHippolyte
9番目の難業the Ninth Labor
ヒッポリュテの帯the Girdle of Hippolyte
珍しいものを欲しがるエウリュステウスEurystheusの娘daughter・アドメテAdmeteが、アマゾンたちthe Amazonsの女王Queen・ヒッポリュテの帯the Girdle of Hippolyteを願ったため、ヘラクレスHeraclesは軍勢を率いて、彼女たちが住む小アジアAsia Minorの北岸・テルモドン河畔the river Thermodonへ出発した。
テセウスTheseusとテラモンTelamonも仲間に加わった。
一行は途中、キュクラデス諸島the Cyclades island groupのパロス島the island of Parosに立ち寄った。
クレタ島CreteのミノスMinos王Kingの息子son・アンドロゲオスAndrogeusが王Kingとして君臨するパロスParosの民がヘラクレスHeraclesの兵を2人殺したので、ヘラクレスHeraclesはパロスParosの町を包囲し、王の2人の息子son・アルカイオスAlcaeusとステネロスSthenelusを人質にとった。
ミュシアMysiaではベブリュケス人the Bebryciansと戦うマリアンデュノス人the Mariandyniansの王King・リュコスLycusを助けた。
(リュコスLycusはこの戦いで奪った地に、英雄heroを記念して、ヘラクレイアポンティカの町を建設した。)
そのあと、アマゾンたちthe Amazonsの住む土地を目指して海路を進んだ。
ヒッポリュテの帯the Girdle of Hippolyteは彼女が父father・アレスAres神より一族の支配者のしるしとして受領したものだったが、ヘラクレスHeraclesがそれを譲って欲しいと申し出ると、女王Queenは好意を示し、意外にあっさり譲り渡す約束をしてくれた。
しかし、英雄heroがそんなにも簡単に成功することを怒ったヘラHeraは、アマゾン族the Amazonsの女に扮してアマゾン族the Amazonsの先頭に立ち、女王Queenが連れ去られると言って、ヘラクレス軍を襲った。
女王QueenのヒッポリュテHippolyteが約束を破ったと思ったヘラクレスHeraclesは女王Queenを殺し、帯Girdleを奪い取って出帆した。
別の説では、ヘラクレスHeraclesとテセウスTheseusはそれぞれ、ヒッポリュテHippolyteに次ぐ権力者であるメラニッペMelanippeとアンティオペAntiopeを捕えたという。
その説では、メラニッペMelanippeは帯Girdleと交換に女王QueenヒッポリュテHippolyteのもとに返され、テセウスTheseusを愛するようになったアンティオペAntiopeは彼のために国を捨て、テセウスTheseusとともにテセウスTheseusの国・アテナイAthensへ渡ったという。
ヘシオネHesione
帰途、ポセイドンPoseidonによって送られた海の怪物Sea
monsterに国を荒らされて困っているトロイアの王King of Troy・ラオメドンLaomedonに力を貸した。
かつてポセイドンPoseidonとアポロンApolloがトロイアTroyの城壁を建設したとき、ラオメドンLaomedonは約束の報酬Rewardを2神に支払わなかった。
そのため神々に復讐されたのである。
ラオメドンLaomedonは要求されるままに、娘daughterのヘシオネHesioneを縛り、海の怪物Sea monsterの餌食に供しようとしているところだった。
ヘラクレスHeraclesは怪物monsterを退治しヘシオネHesioneを救う報酬Rewardとして、トロイアTroyがゼウスZeusから贈られた名馬Famous horseを自分に与えるという約束をラオメドンLaomedonと結び、アテナ女神the
goddess Athenaがヘラクレスのために海岸にしつらえた砦のうしろから怪物monsterを襲った。
争ううちに英雄heroは怪物monsterの大きな口に飲まれたが、腹のなかから怪物monsterを刺し殺した。
しかし、狡猾なラオメドンLaomedonは今度も言を左右にして約束を守らなかった。
ヘラクレスHeraclesは復讐を誓った。
(一説によると、この出来事はヘラクレスHeraclesがアルゴ船the Argoの遠征から戻った時のものである。)
次は、トラキアThraceのアイノスAenusに立ち寄った時のことである。
かつてポルテュスPoltys王Kingの歓待を受けたことがあったが、ヘラクレスHeraclesは王Kingの放埓な兄弟brother・サルペドンSarpedonを殺した。
さらにタソス島the island of Thasosでは、島を征服し、それをパロス島the island of Parosを征服したときに人質にとったアルカイオスAlcaeusとステネロスSthenelusに譲り渡した。
ティリュンスTyrinsのエウリュステウスEurystheus王Kingのもとへ到着し、アマゾンthe Amazonsの女王Queen・ヒッポリュテの帯the Girdle of Hippolyteを差し出したが、王KingはそれをアルゴスArgosのヘラHera女神Goddessの神殿templeに奉納した。
ゲリュオンGeryon
クリュサオルChrysaorとカリロエCallirhoeの息子Son
三頭three heads、または三頭three heads三体three
bodiesの怪物Monster
10番目の難業the Tenth Labor
ゲリュオンの牛the Cattle of Geryon
残る3つの難業Laborsを成すために、ヘラクレスHeraclesはこの世の果て、さらにはあの世the Underworldへまでも出かけなくてはならなかった。
ホメロスHomerは『オデュッセイアOdyssey』の中で、あの世the Underworldはこの世の西の果てWest end、オケアノスOceanusの流れの向こうに存在すると、言っている。
この旅のついでに、ヘラクレスHeraclesは多くの二次的な仕事(パレルガ)も行った。
3つの頭three headsを持つ怪物Monster・ゲリュオンGeryon(本来はハデスHadesが姿を変えたものだったらしい)が所有する多くの牛Cattleは、イベリアIberia(スペインSpain)の西westの沖合いに位置する神話上の架空の島・エリュテイアErythea(「赤い島red island」、すなわち「太陽の沈む夕焼けの地」)で放牧されていた。
それらの牛Cattleを盗み、アルゴスArgosまで連れ帰るのが、10番目の仕事the Tenth Laborだった。
ヘラクレスHeraclesはリビュアLibya経由で西westへ向かった。
炎天の砂漠desertの暑さに閉口した彼は、太陽神Sun god・ヘリオスHeliosに向かって弓を引き絞った。
しかし、太陽神Sun god・ヘリオスHeliosは怒るどころか、英雄heroの勇気に感嘆し、太陽Sunが西westに沈んだあと毎晩オケアノスOceanusを渡って帰るときに使う黄金の大杯great golden cupを、彼に貸した。
英雄heroはその黄金の大杯great golden cupに乗ってオケアノスOceanusの流れを渡り、エリュテイアErytheaに着いた。
途中、ジブラルタル海峡the Strait of Gibraltarを渡るときには、欧州EuropeとアフリカAfricaの山に向かい合って立つ2本の「ヘラクレスの柱the Pillars of Hercules」を建てた。
オルトロスOrthrus
テュポンTyphonとエキドナEchidnaの息子Son
双頭の犬two-headed dogで、ゲリュオンの牛Geryon's cattleの番犬watchdog
エリュテイアErytheiaで、番犬watchdog・オルトロスOrthrusと牛飼いherdsmanのエウリュティオンEurytionを棍棒clubで打ち殺し、牛Cattleたちを盗むと黄金の大杯great golden cupに乗せて帰路についた。
近くの牧草地でハデスHadesの家畜番をしていたメノイテスMenoetesが、騒ぎに気付き、ゲリュオンGeryonに知らせた。
怒った怪物Monster・ゲリュオンGeryonはヘラクレスHeraclesを追跡したが、アンテムス河畔でヘラクレスHeraclesの毒矢poisonous arrowsに射られて死んだ。
それから彼はタルテッソスTartessos(スペインSpain南西の都市、現在のどの地にあたるかは不明)に渡り、そこでヘリオスHelios神に黄金の大杯great golden cupを返却し、あとは歩いてスペインSpainを通り、南フランスSouthern Franceへ入った。
すぐにリグリアLiguriaの土民の大軍に襲われ、あやうく牛Cattleを奪われ、ヘラクレスHeracles自身が殺されそうになったが、敵が放つ矢の雨をくぐって逃げた。
折よく天からリグリア人the Liguresの上に石の雨Stone rainが降ったが、それはゼウスZeusの天助だった。
ヘラクレスHeraclesも石stoneを拾って投げつけ仕返しをした。
現在、プロヴァンスProvence地方(当時リグリア人the Liguresが住んでいたところ)に散在して残る巨大な石群は、このときの石stoneであると信じられている。
スキタイ族Scythians
黒海the Black Seaの北に位置する森の国で、ヘラクレスHeraclesは眠っているうちに馬Horseを盗まれた。
盗まれた馬Horseを捜していると、蛇の尻尾Snake tailを生やし洞窟caveに住む不思議な女に合った。
その国の女王Queenで馬Horseを盗んだ犯人である。
しかし、彼女は自分と交わらなければ馬Horseは返さぬと言う。
ヘラクレスHeraclesは彼女が彼の息子sonを3人産む月日の間、彼女とともに暮らした。
息子sonたちは、スキュテスScythes、ゲロノスGelonus、アガテュルソスAgathyrsusといい、それぞれ強大な民族の祖となってその名を残した。
馬Horseは返され、その地を去ろうとするヘラクレスHeraclesに、蛇の尾Snake tailを持つ彼女が3人の息子sonの未来を尋ねた。
ヘラクレスHeraclesは1本の弓を渡し、その強弓を引くことができる息子sonを後継者に選ぶよう言い残した。
スキュテスScythesが弓を引き、スキュテスScythesの子孫のスキュテス族Scythiansは南方ロシアSouthern russia最強の国となった。
カクスCacus
ゲリュオンの牛the Cattle of Geryonを連れたヘラクレスHeraclesは、イタリアItalyを通って南下した。
のちにローマRomeが建国される地で休んでいるとき、その地を支配するエウアンドロスEvander, Euandros王Kingの牛Cattleを盗んだ怪物Monster・カクスCacusを退治し、王Kingに感謝された。
ヘラクレスHeraclesはそこに大祭壇アラ・マクシマを築き英雄崇拝の祭事を確立した。
イタリアItalyのカムパニアのバイアイ市の近くには、海岸線に沿って長い道路を建設した。
南イタリアSouth Italyのレギオンで牛Cattleが1頭、シシリア島Sicilyに向けて泳ぎ出した。
ヘラクレスHeraclesはそれを追うために残りの牛CattleをヘパイストスHephaestus神に託した。
逃げた牛Cattleはシシリア島Sicilyの西に着いたが、その地の王・エリュクスEryxはそれを自分の家畜の群れの中に紛れ込ませ、ヘラクレスHeraclesに格闘を挑んだ。
自分が負ければ牛Cattleを返す、というのである。
ヘラクレスHeraclesは3回戦い、3回ともエリュクスEryxを打ち負かし、殺した。
コリントス地峡the Isthmus of Corinthを通ったとき、ギガスGigas(巨人giant)のアルキュオネウスAlcyoneusがヘラクレスHeraclesに石stoneを投げつけ襲いかかってきたが、あまりに強く投げられたその石stoneはヘラクレスHeraclesに当たって跳ね返り、投げた本人に当たってその命を奪った。
災難はまだまだ続いた。
牛Cattleの群れを率いて、やっとティリュンスTyrinsに到着したと思った途端、ヘラHeraが虻gadflyを使って牛Cattleを追い払ってしまった。
方々に散った牛Cattleを集めることは一苦労だった。
エウリュステウスEurystheusはヘラクレスHeraclesを見て驚いた。
あまりに長い間不在だったため、すでにヘラクレスHeraclesは亡き者、と思っていたのである。
牛CattleはヘラHeraに捧げられた。
Hercules
steals the Apples of the Hesperides
ラドンLadon
テュポンTyphonとエキドナEchidnaとの間に生まれた
100の頭a hundred headsを持った怪竜serpent-like dragon
ヘラクレスHeraclesは園からりんごを採ったときにラドンLadonも殺したという
11番目の難業the Eleventh Labor
ヘスペリデスのリンゴthe Apples of the Hesperides
デルポイの神託the Delphic oracleによってヘラクレスHeraclesの課せられた難業Laborsの数は10であったから、既に、すべてが成し遂げられたはずであったが、前述したように、エウリュステウスEurystheusがそのうちの2つを正式な難業Laborsとして認めなかったために、さらに2つの途方もない難業Laborsがつけ加えられることになった。
天球celestial sphereを支えるアトラスAtlas
まず最初は、ヘスペリデスthe Hesperides(「夕べの娘」たち)が守る黄金のりんごthe golden applesを持ち帰る仕事だった。
彼女たち(ヘスペリデスthe Hesperides)はティタン神族TitansのアトラスAtlasの娘daughterたちと言われることもある。
アトラスAtlasが双肩shouldersに天空celestial sphereを支え、彼女たちの園(ヘスペリデスの園the garden of the Hesperides)の近くに住んでいたからである。
その黄金のりんごthe golden applesは、ヘラHeraとゼウスZeusの結婚を祝って祖母grandmother・ガイアGaea(大地the Earth)がヘラHeraに贈った記念樹Memorial treeであり、この世の果ての庭gardenに植えられ、ヘスペリスHesperis姉妹Sistersと、100の頭を持つ大蛇hundred-headed
dragon・ラドンLadonが守っていた。
まず、その庭gardenを捜し出すことが容易でなかった。
エリダノス川the river Eridanusのニンフたちnymphsに相談すると、ネレウスNereusから情報を引き出すようにと教えてくれた。
ネレウスNereusは、誰かが捕えようとすると、自由自在に姿を変える海神sea godである。
ヘラクレスHeraclesが捕まえようとしたときも、あれこれ奇妙な姿に変化したが、うまくおだててやっと聞き出した。
庭gardenははるか遠いFar away西の果てWest
endにあることが分かった。
プロメテウスPrometheus
道中、様々な思いがけない事件に出くわした。
カウカソスCaucasusの岩山rockでは、縛られたboundプロメテウスPrometheusの肝臓liverを食いfeed荒らしていた鷲eagleを殺し、プロメテウスPrometheusを自由freedにした。
エジプト王King of Egypt・ブシリスBusirisはヘラクレスHeraclesをゼウスZeusに犠牲sacrificeとして捧げようとしたが、反対にヘラクレスHeraclesは彼を殺した。
アンタイオスAntaeus
リビュアLibyaでは、ガイアGaea(大地the Earth)の息子sonで強者のアンタイオスAntaeusと格闘し、両手で彼を高々と持ち上げ、大地に投げつけて殺した。
アレスAresの息子son・リュカオンLycaonも戦いを挑んできたが、打ち負かした。
ロドス島Rhodesでは、牛追いCattle chaserから牛Cattleを1頭盗んで犠牲sacrificeに供し、その肉を食べた。
牛追いCattle chaserはただ立ち尽くして呪うcurseばかりだった。
ヘラクレスHeraclesに犠牲sacrificeを捧げるとき、呪いの言葉Curse wordsとともに行うロドス島Rhodesの習慣は、このとき以来のものと信じられている。
アトラスAtlasはヘラクレスHeraclesから天空celestial sphereを返されることを断り、自分がエウリュステウスEurystheusのところまで黄金のりんごthe golden applesを届けると言い出した。
黄金のりんごthe golden applesの手に入れ方についても2通りの説がある。
一般には次の説が広く知られている。
おそらくは救ったプロメテウスPrometheusの助言に従ったのであろうが、ヘラクレスHeraclesはティタン神族TitansのアトラスAtlasに、アテナ女神the goddess Athenaに助けられながら自分が代わってしばらく天空celestial sphereを支えているから、娘daughterたち(ヘスペリデスHesperides)から黄金のりんごthe golden applesを貰ってきて欲しいと頼んだ。
アトラスAtlasは永劫の苦役からしばらくでも解放されることを喜び、すぐに同意した。
しかし、アトラスAtlasはヘラクレスHeraclesから天空celestial sphereを返されることを断り、自分がエウリュステウスEurystheusのところまで黄金のりんごthe golden applesを届けると言い出した。
ヘラクレスHeraclesは承知した振りをし、天空celestial sphereを支える頭の上の円盤を整える間だけ、天空celestial sphereを持っていて欲しいと頼んだ。
アトラスAtlasに天空celestial sphereを渡した瞬間、ヘラクレスHeraclesは身をかわし、黄金のりんごthe golden applesを掠め取ってそのままギリシアGreeceに向かってひた走った。
エウリピデスEuripidesの知っていた伝説では、ヘラクレスHeracles自身が黄金のりんごthe golden applesの樹の番をするラドンLadonを殺し、樹からりんごapplesをもぎ取ったことになっている。
そして、渇きを覚えたヘラクレスHeraclesが大地を蹴ると、そこから泉が湧き出したという。
(この泉はのちに、アルゴナウタイthe Argonautsがこの地を通ったとき、一行の喉を潤した。)
さらに、たまたま近くに居合わせたエオスEosとティトノスTithonusとの息子son・エマティオンEmathionが、ヘラクレスHeraclesが黄金のりんごthe golden applesを取ろうとするところを阻止しようとしたが、殺された。
そして、ラドンLadonはヘラHeraによって天に招かれ竜座the Dragonの星(星座constellation)となったという神話もある。
竜座(りゅう座)Draco(the Dragon)
この説は、アトラスAtlasは既にペルセウスPerseusにゴルゴンたちGorgonsのメドゥサMedusaの顔を見せられて、大きな石の山(モロッコMoroccoにあるアトラス山脈the
Atlas Mountains)に変わってしまっていたという話とつじつまが合う。
エウリュステウスEurystheusは一旦黄金のりんごthe golden applesは受け取ったが、すぐにその場でヘラクレスHeraclesに返した。
自分が持っているには、それらはあまりに神聖な果実Sacred fruitだったからである。
ヘラクレスHeraclesからアテナ女神the goddess Athenaへ返された黄金のりんごthe golden applesは、再びヘスペリデスの園the garden of the Hesperidesへ戻った。
ケルベロスCerberus
12番目の難業the Twelfth Labor
ケルベロスCerberus
ヘラクレスHeraclesに課せられた(一般的な順序による)最後の仕事は、冥界UnderworldのハデスHadesの館の門Gate of the mansionを守る番犬watchdog・ケルベロスCerberusを捕まえてくることだった。
今度こそ、永遠にヘラクレスHeraclesを厄介払いすることができるとエウリュステウスEurystheusは思った。
ところが、ヘラクレスHeraclesは堂々とハデスHadesを負かし、不死身Immortalの資格も手に入れたのである。
さて、それはまず冥界the Underworldへの道を見つけることから始まった。
そのために、エウモルポスEumolpusからエレウシスの秘教the Eleusinian mysteriesに入会を許され(異邦人はエレウシス教the Eleusinian mysteriesへの入会は許されなかったために、彼はエレウシスEleusisの市民・ピュリオスPhylliusの養子となった)、かつてケンタウロス族centaursを大勢殺害した罪の汚れも浄められた。
デメテルDemeterの始めたエレウシス秘教the Eleusinian
mysteriesの秘儀に守られて、やっとヘラクレスHeraclesは冥界the Underworldへ進むことができた。
アドメトスAdmetusの身代わりに死んだアルケスティスAlcestisを救ったのは、このときとする説もある。
ペロポネソス半島the Peloponnese peninsulaの南部ラコニアLaconiaのタイナロン岬Cape Tainaronで「死出の旅の案内人」でもあるヘルメスHermesに会い、死者の国the Underworldへ先導してもらった。
ヘラクレスHeraclesを守護するアテナAthenaも付き添った。
カロンCharon
ステュクス川Styxの渡し守りferryman・カロンCharonは、生きたヘラクレスHeraclesの姿を見て驚き、あわててオールoarを漕ぎ向こう岸へ運んでくれた。
(この軽率な行動に対する罰として、カロンCharonはハデスHadesによって1年の間鎖につながれた。)
なかなか入国を許してくれないハデスHadesとは取っ組み合いになったが、ハデスHadesは怪我をしてオリュムポスOlympusまでパイエオンPaeonの軟膏を取りに行く始末だった。
ついにハデスHadesから許可がでた。
武器を持たず、素手でWith bare handsケルベロスCerberusを捕えることができたら、地上へ連れて帰ってよい、というのである。
王妃QueenペルセポネPersephoneの略奪計画が未遂に終わり、忘却の椅子chairs of
forgetfulnessに座らされているテセウスTheseusとペイリトオスPirithousに出会ったのは、このときである。
ペイリトオスPirithousの計画に力を貸しただけで首謀者ではなかったテセウスTheseusは、ヘラクレスHeraclesとともに地上へ帰ることが許された。
ペイリトオスPirithousは忘却の椅子chairs of
forgetfulnessを離れることを許されなかった。
その他、ゴルゴンGorgon姉妹SistersのメドゥサMedusaやメレアグロスMeleagerの亡霊Ghostにも会った。
メドゥサMedusaの亡霊Ghostはもはやいかなる危害も加えることはないから恐れることはない、とヘルメスHermesから教えられた。
メレアグロスMeleagerの亡霊Ghostは、自分が死に至るまでの経緯を綿々と物語ったが、それに心動かされたヘラクレスHeraclesは、彼の姉妹sisterのデイアネイラDeianiraの美しさを聞かされると、地上へ帰ったらきっと彼女を妻wifeに迎えると約束して亡霊Ghostを慰めた。
この約束はのちに果たされた。
デメテルDemeterによって、ミミズクHorned owlと化すアスカラポスAscalaphus
大きな岩の下敷きにされていたアスカラポスAscalaphusの亡霊Ghostも自由にした。
彼は、ペルセポネPersephoneはハデスHadesにさらわれて冥界the Underworldへやって来たときざくろの実Pomegranateを食べたことを暴露したため、そのような罰を受けていたのである。
それから、亡霊Ghostたちに食べさせようとして、ハデスHadesの牛Cattleを1頭殺した。
しかし、ヘラクレスHeraclesは王妃QueenペルセポネPersephoneから、もうこれ以上冥界the Underworldの秩序orderを乱し荒らさないで欲しい、さっさとケルベロスCerberusを連れて地上に戻るようにと懇願された。
そこでヘラクレスHeraclesはケルベロスCerberusを倒し、肩に担いで地上へ帰った。
トリカブトaconite (wolf's-bane)
エウリュステウス王King Eurystheusの領土ティリュンスTyrinsへの道中、冥界the Underworldの番犬watchdog・ケルベロスCerberusの恐ろしい外見は、数多くの不幸の原因となった。
猛毒virulent poisonを持つトリカブトaconite (wolf's-bane)の木が、ケルベロスCerberusの吐く唾spitから生え出たのも、それらの不幸のうちの1つである。
ヘラクレスHeraclesの生還Survivalの知らせを聞いたエウリュステウスEurystheusは、ケルベロスCerberusが城へ着く前から早々と、いつもと同じように地中の青銅の甕bronze winejarの中に身を隠した。
ヘラクレスHeraclesはケルベロスCerberusを確かに連れ帰ったことを示すとすぐに、ハデスHadesの承諾を得てその恐ろしい怪獣monsterを元の場所に戻した。
展示用住宅 Model Town House 2007年(平成19年)
海外の建売住宅のような建物
展示用住宅 Model Town House 2007年(平成19年)
冥界the Underworldから生還SurvivalしたヘラクレスHeraclesの不死身Immortalはこうして保証されたが、しかしまだ、人間として生きるべき余生が残っていた。
最終の安息reposeを得るまでには、再び奴隷slaveとして仕える一時期もあった。
さて、十二の難業the Twelve Laborsをすべて成し遂げたあと、最初にヘラクレスHeraclesがしたことは(殺されたのは子供childrenたちだけで、メガラMegaraは殺されなかったとする説では)メガラMegaraと離婚divorceし、彼女を甥nephewのイオラオスIolausと再婚Remarriageさせることだった。
メガラMegaraとの間に生まれた子供childrenたちを殺した自分には、もはやメガラMegaraの夫husbandたる資格はない、という理由からである。
イオレIole
そのあと、オイカリアOechaliaの王King・エウリュトスEurytusが主催する弓術大会the archery contestに参加した。
その勝者は褒美に王Kingの娘daughter・イオレIoleが与えられることになっていた。
ヘラクレスHeraclesは勝ったが、彼の不幸な結婚marriageの前歴を知った王Kingは、娘daughterを与えることを断った。
英雄heroの武勇を尊敬するイピトスIphitusがひとり父王Father Kingにとりなしてくれたが、無駄だった。
怒ったヘラクレスHeraclesはオイカリアOechaliaを去った。
そのとき、王Kingの所有する牝馬Mareか、あるいは牛cattleが数頭いなくなった。
(のちにこれは、アウトリュコスAutolycusが盗んだと判明した。)
イピトスIphitusはヘラクレスHeraclesのあとを追い、それらを捜してくれるよう頼んだ。
初め快く承知し、イピトスIphitusと連れ立って進んだヘラクレスHeraclesだったが、おそらく、イピトスIphitusの依頼の言外にある自分への疑惑に腹を立てたのであろう、屋根の上から、あるいは城壁の上から、イピトスIphitusを突き落として殺した。
このむごたらしい行為cruel behaviorが自発的なものだったか、あるいは、ヘラHeraに狂気madnessを吹き込まれたためだったか、いずれにしろ、ヘラクレスHeraclesは正常な精神状態Normal mental stateではなかった。
ピュロスの王King of Pylos・ネレウスNeleusに罪の汚れSin stainを浄めてくれるよう頼んだが、イピトスIphitusの父father・エウリュトスEurytusの友人である王Kingは、それを拒んだ。
ピュティアPythia
神託oracleを仰ぎに行ったデルポイDelphiでは、ヘラクレスHeraclesの狂暴な発作Violent seizuresを嫌う巫女priestess・ピュティアPythiaが、彼を追い払おうとした。
ヘラクレスHeraclesは巫女priestessの座る聖なる三脚台tripodを奪い、デルポイDelphiの神殿the Temple of
Apollo at Delphiを破壊すると脅した。
神殿Templeの主・アポロンApolloが現れ、ヘラクレスHeraclesと取っ組み合いになったが、ゼウスZeusが雷Thunderを投げて、2人を引き離した。
巫女priestess・ピュティアPythiaが、3年間の奴隷奉公Slave serviceを言い渡し、ヘラクレスHeraclesはそれを受けた。
エウリュトスEurytusには息子son・イピトスIphitusの死の賠償金を支払うようにとも命じられたが、エウリュトスEurytusの方で、それを受け取らなかった。
オムパレOmphale
ヘルメスHermesはヘラクレスHeraclesをリュディアLydiaのトモロスTmolus王Kingの寡婦widowであるオムパレOmphaleのところへ連れて行き、彼を奴隷slaveとして売り渡した。
オムパレOmphaleに仕える間、英雄heroは多くの立派な仕事を行った。
エペソスEphesusに住む猿のような顔をした盗人・ケルコペスCercopesを捕え、また旅人を捕まえて自分の葡萄畑で強制労働をさせていたリュディア人the LydiansのシュレウスSyleusを殺した。
この時は、自分も畑で働く振りをしながら、持っていた鍬でシュレウスSyleusを打ち殺したのである。
オムパレOmphaleの敵であるイトネ人Itonesを破り、その町cityを破壊した。
オムパレOmphaleはヘラクレスHeraclesに女装をさせ糸車を回す仕事をさせたとする説、あるいは、オムパレOmphaleはヘラクレスHeraclesの妻wifeとなり、二人の間にラモスLamos(アゲラオスAgelausともいう)が生まれたとする説もある。
オムパレOmphaleのもとでの3年の年季apprenticeshipが終わるころ、ヘラクレスHeraclesの狂気の発作Crazy seizuresを起こす病はすっかり癒えた。
テラモンTelamon
アイギナ島island of Aeginaの王King・アイアコスAeacusとエンデイスEndeisとの息子Son
さて次の仕事は、これまでヘラクレスHeraclesを冷遇し虐待した者に対する復讐revengeだった。
まずはトロイアTroyの憎きラオメドンLaomedonからである。
サラミスSalamisのテラモンTelamonを副官にして18隻からなる艦隊を率い、トロイアTroyへ向け出発した。
トロイアTroyに上陸したあと、船の番はオイクレスOiclesに任せたが、彼はトロイア人the Trojansに殺され、船団には火が放たれようとしていた。
ヘラクレスHeraclesは城下を包囲し、テラモンTelamonが真っ先に城壁を破って城内へ入った。
しかし、テラモンTelamonが自分より武勇に優れていると妬んだヘラクレスHeraclesは、テラモンTelamonを討とうとしたが、ヘラクレスHeraclesの祭壇を築こうとしたのだ、というテラモンTelamonの答えを喜び、怒りを和らげた。
ヘラクレスHeraclesはラオメドンLaomedon王Kingを殺し、またポダルケスPodarcesとティトノスTithonusを除く王Kingの息子sonたち全員を殺した。
ポダルケスPodarcesは、姉妹sisterのヘシオネHesioneが被っていたベールを脱いで代償とし、命乞いをしてくれたため救われたのだった。
かくして、以前与えられると約束されたままだったトロイアTroyの名馬Famous horseは、ついにヘラクレスHeraclesのものになった。
テラモンTelamonにはヘシオネHesioneが与えられ、2人の間にテウクロスTeucerが生まれた。
王King亡きあとのトロイアTroyは、救われた王子prince・ポダルケスPodarcesに与えられた。
ポダルケスPodarcesはやがて名をプリアモスPriamと改めた。
彼がヘシオネHesioneの払った代償によって命拾いをした事情から、プリアモスPriamの名は「私は買う」という意味の動詞プリマアイから派生した名前であるとする説があるが、正確には語根が似ているというだけのことである。
ヘラクレスHeraclesはトロイアTroyからの帰途、ヘラHeraの送った暴風により南へ流されコス島the island of Cosに漂着した。
このとき、ゼウスZeusは自分の息子sonに対するヘラHeraのあまりに執拗な酷いやり方を罰し、彼女の両手首をオリュムポスOlympusの高嶺に縛り、足には重りになるように、鉄床(かなとこ)をくくりつけ、宙吊りにした。
コス島the island of Cosでは、島の住人メロペ人たちが、海賊船の来襲だと間違えて攻撃してきたが、エウリュピュロスEurypylus王KingはヘラクレスHeraclesに殺された。
ギガントマキアGigantomachy
ヘラクレスHeraclesが神々Godsに味方して、プレグライの野で繰り広げられるギガントマキアGigantomachy(巨人との戦い)に参戦したのは、この時である。
この戦いで敵を倒す死の矢を射るのは神々Godsではなく人間でなければならない、ということを知るアテナ女神the goddess Athenaが、ヘラクレスHeraclesの力と彼が持つヒュドラHydraの必殺deadlyの毒矢Poison arrowを頼みに、英雄heroをコス島the
island of Cosからプレグライの野へ運んだのである。
次は、先にヘラクレスHeraclesが糞dungの山積みした家畜小屋Stablesを掃除clean upしたとき、その報酬Rewardを支払わなかったエリスElisの王King・アウゲイアスAugeasである。
モリオニダイMolionidae(モリオネMolioneとアクトルActorとの2人の息子son)が優れた将としてアウゲイアスAugeas軍を率いていたため、1回目の遠征はヘラクレスHeracles軍が敗走した。
エウリュステウスEurystheusにアルゴリスArgolisを追われたヘラクレスHeraclesは居をアルカディアArcadiaのペネオスに移し、そこでモリオニダイMolionidaeを待ち伏せした。
そして、イストミア祭Isthmian Gamesに参加する代表として彼らがその地を通るとき、不意打ちを食わせて殺した。
そのあとエリスElisを攻略し、アウゲイアスAugeasを殺し、かつて自分に有利な証言をしてくれたピュレウスPhyleusを新王New Kingとした。
ヘラクレスHeraclesがエリスElisのオリュムピアOlympiaでゼウスZeus大神に犠牲を捧げ、オリュムピア競技祭the Olympic Gamesを始めたのは、この時である。
ネストルNestor
ヘラクレスHeraclesのピュロスPylos襲撃を免れたネレウスNeleus王Kingのただ1人の息子son
次にピュロスPylosへ進軍した。
かつてイピトスIphitus殺しの罪の汚れSin stainを浄めることを拒んだネレウスNeleus王Kingに対する復讐revengeのためである。
一説では、ネレウスNeleusとその息子sonたちはヘラクレスHeraclesによってイピトスIphitusが殺された時に同じように殺されており、オムパレOmphaleに奴隷奉公Slave serviceすることになった狂気の発作Crazy seizuresは、その忌まわしい行為に起因するものという。
いずれにしろ、ネレウスNeleusの息子sonのうち、幼少のためゲレニア人の所で育てられていて、ピュロスPylosを留守にしていたネストルNestorのみが殺害を免れ、生き残った。
次はヒッポコオンHippocoonが治めるスパルタSparta攻略である。
ヒッポコオンHippocoonが兄elder brotherのテュンダレオスTyndareusを追放し王位throneを奪っていたこと、そして、ヘラクレスHeraclesを敵としてネレウスNeleusに味方したこと、さらに、ヘラクレスHeraclesの従兄弟CousinのオイオノスOeonusが犬dogに石stoneを投げたという口実で、ヒッポコオンの息子sonたちに惨殺されたこと、などが攻略の理由である。
ヘラクレスHeraclesはテゲアTegea(アルカディア)の王King・ケペウスCepheusとその息子sonたちの援軍を得て、スパルタSpartaへ進軍した。
ヘラクレスHeraclesは敵を倒し、スパルタSpartaの王位throneをテュンダレオスTyndareusのために奪還したが、異父兄弟half brotherのイピクレスIphicles、ケペウスCepheus王King、そしてケペウスCepheus王Kingの息子sonたちのほとんどが戦死した。
ケペウスCepheusの娘daughter・ステロペSteropeは、アテナ女神the goddess Athenaが父fatherに与えたゴルゴンGorgonの髪の毛hairを手に持って敵を敗走させ、テゲアTegeaの国を守った。
ヘラクレスHeraclesはケペウスCepheusの姉妹sister・アウゲAugeと交わり、アウゲAugeはヘラクレスHeraclesの息子son・テレポスTelephusを産んだ。
メレアグロスMeleager
そのあと、ヘラクレスHeraclesはメレアグロスMeleagerの亡霊Ghostと約束したデイアネイラDeianiraとの結婚marriageを思い出し、オイネウスOeneusが治めるカリュドンCalydon in Aetoliaへ出かけた。
デイアネイラDeianiraにはアケロオス河神the river god Achelousがすでに求婚Proposalしていたため、2人でデイアネイラDeianiraを争うことになった。
アケロオス河神the river god Achelousが牛Cattleに変身Transformしたとき、ヘラクレスHeraclesはその角Hornを折って負かし、デイアネイラDeianiraを妻wifeとした。
彼はカリュドン人Calydoniansを助けてテスプロティア人の国を攻め落とし、国王King・ピュラスPhylasの娘daughter・アステュオケAstyocheと交わって、トレポレモスTlepolemusの父fatherとなった。
デイアネイラDeianiraは息子son・ヒュロスHyllusと娘daughter・マカリアMacariaを産んだ。
しかし、ヘラクレスHeracles夫婦husband and wifeはカリュドンCalydon in Aetoliaを去らねばならなくなった。
食卓tableで給仕serverをしていた少年boy・エウノモスEunomusが過ってヘラクレスHeraclesの膝に酒をこぼしたことを怒り、ヘラクレスHeraclesが少年boyを殺したのである。
オイネウスOeneusは彼を許したが、当時の習慣に従い、彼はその地を追放された。
デイアネイラDeianiraを連れたヘラクレスHeraclesはトラキスTrachisへ向かった。
デイアネイラDeianira
エウエノス川the river Evenusでは水かさの増した急流を、ケンタウロス族centaursのネッソスNessusがデイアネイラDeianiraを背に負い渡ってくれた。
しかし、先に岸に着いたネッソスNessusがデイアネイラDeianiraを犯そうとしたので、ヘラクレスHeraclesはヒュドラHydraの胆汁bileに浸した必殺deadlyの毒矢Poison arrowを放ち、ネッソスNessusを射殺した。
ネッソスNessusは死に際に、ヘラクレスHeraclesの愛が醒めたときの媚薬として自分が流した血を取っておくよう、デイアネイラDeianiraに言い残した。
言われるままを信じたデイアネイラDeianiraは、こっそりそれを瓶にしまった。
トラキスTrachisに着いたヘラクレスHeraclesは、ケユクスCeyx王Kingを味方につけて、ドリュオプス人the people Dryopes、ラピテス人the Lapithsと交戦し、負かした。
ドリュオプス人the people Dryopesとラピテス人the Lapithsの領土の一部はドリス人the Doriansの王King・アイギミオスAegimiusに与えた。
アイギミオスAegimiusが返礼として、自分の王国Kingdomに英雄heroの館と領地を提供すると申し出ると、ヘラクレスHeraclesはそれを自分の子孫descendantsのために受け取った。
やがてこの神話から、ドリス人the Doriansの先祖ancestorはヘラクレスHeraclesであると信じられるようになった。
次にヘラクレスHeraclesは、テッサリアThessalyへ向かった。
イトノスを通るとき、アレスAresの息子son・キュクノスCycnusから挑戦を受けた。
キュクノスCycnusは父fatherの神殿Templeを建設するために、犠牲Sacrificeとして殺した人間の骨を煉瓦代わりに使ったり、デルポイの神託the Delphic oracleを仰ぎに向かう巡礼者Pilgrimたちを途中で待ち伏せして殺し、供物を取り上げたりしていた。
息子sonたちに加勢するアレスAres神が介入したが、ヘラクレスHeraclesはキュクノスCycnusを討ち、このときも、ゼウスZeusが雷Thunderを落とし、組み合う2人を引き分けた。
一説によれば、この事件はヘラクレスHeraclesがヘスペリデスの黄金のリンゴthe golden Apples of the Hesperidesを捜しているときのことで、舞台になった地はマケドニアMacedoniaだという。
ヘラクレスHeraclesの最後の戦争は、エウリュトスEurytusへの復讐戦Revenge battleだった。
弓術大会the archery contestの褒賞rewardとして娘daughter・イオレIoleを与える約束Promiseをしておきながら、エウリュトスEurytusはその約束Promiseを果たさなかったのである。
デイアネイラDeianiraをトラキスTrachisに残し、同盟軍を擁したヘラクレスHeraclesはオイカリアOechalia(おそらくテッサリアThessalyと思われるが、あるいは、エウボイアEuboeaの地かもしれない)へ進軍した。
激しい戦闘が繰り広げられ、ケユクスCeyx王Kingの息子sonたち2人も死んだが、結局はヘラクレスHeraclesの勝利に終わり、エウリュトスEurytusと彼の息子sonはすべて戦死した。
イオレIoleは逃れようとして城壁から身を投げたが、長衣が風をはらんだため、無傷のまま地上に落ちた。
ヘラクレスHeraclesはイオレIoleを妾concubineとし、他の捕虜prisonerたちと一緒にトラキスTrachisへ送った。
ヘラクレスの死Death of Hercules
そしてデイアネイラDeianiraには、ボイオティアBoeotiaのケナイオン岬でゼウスZeus神に感謝の犠牲Sacrificeを捧げるため、新しい衣類を用意するよう命じた。
リカスLichasが使者messengerにたち、それを取りに出かけた。
夫husbandの愛がイオレIoleに移ったのではないかと案ずる妻wifeは、しまってあったネッソスNessusの血bloodを新しい服に塗ってリカスLichasに託した。
服を着換えたヘラクレスHeraclesは、ゼウスZeusに犠牲Sacrificeを供する儀式を始めたが、その間にも、ヒュドラHydraの矢arrowを受けて流したネッソスNessusの血bloodの熱い毒Poisonが、しだいにヘラクレスの逞しい肉体を侵し始めた。
悶え苦しみながらヘラクレスHeraclesは、使者messengerのリカスLichasを捕え海中に投げ捨てた。
衣服をかきむしり脱ぎ捨てようとしても、肌に吸いついて剥がれない。
悶え苦しみながらトラキスTrachisへ海路送られてきた夫husbandを見て、デイアネイラDeianiraは初めてネッソスNessusに騙されたことを知り、絶望して自害した。
ヘラクレスHeraclesもやっと事の次第を知った。
思えば、ヘラクレスHeraclesは生きた人間によってではなく、すでに死んだ者によって殺される、という予言があったのだ。
デルポイの神託the Delphic oracleは、テッサリアThessalyのオイテ山Mount Oetaに火葬壇Cremation platformを築き、そこに登ってあとはすべてをゼウスZeus大神に委ねよと命じる。
息子son・ヒュロスHyllusに手伝わせて、ヘラクレスHeraclesは神託oracleに従った。
息子sonが火葬壇Cremation platformを築き、ヘラクレスHeraclesはそこに横たわった。
しかし、恐れて誰一人それに火をつける者がない。
偶然そこを羊sheepを連れて通りかかったテッサリアThessalyのメトネの領主・ポイアスPoeasがヘラクレスHeraclesの必殺deadlyの弓矢Bow and arrowを礼に与えると約束されて、火を点ずる役を引き受けた。
昇天ascension to heavenするヘラクレスHeracles
燃え上がる炎が、ヘラクレスHeraclesの人間に属する生身の部分を焼くと、激しい轟音とともに稲妻が光り、ヘラクレスHeraclesの姿は跡形もなく消えた。
ヘラクレスHeraclesは昇天ascension to heavenし、神々Godsの仲間入りをしたのである。
天上では、ヘラHeraとの和解も成立し、ヘラHeraから娘daughterのヘベHebeを与えられて結婚marriageした。
ゼウスZeusはヘラクレスHeraclesの名を星座constellation(ヘルクレス座Hercules)のなかに加えた。
ヘルクレス座Hercules
神々の仲間入りをしてからも、ヘラクレスHeraclesはしばしば地上に降り、友人を助けた。
かつての宿敵・エウリュステウスEurystheusがアッティカAtticaを攻略したときのことである。
いまや高齢aged personになった甥nephewのイオラオスIolausがヘラクレスHeraclesの子供childrenたちを庇護するためには、彼には再び若さyouthが与えられねばならない。
青春の女神Goddess of youthである妻wife・ヘベHebeを説得したヘラクレスHeraclesは、ヘベHebeと一緒に2つの光る星に姿を変え、イオラオスIolausの戦車Chariotの轅(ながえ)shaftを照らして彼を守った。
また、怪我がもとでトロイアTroy遠征の途中レムノス島the island of Lemnosに置き去りにされたピロクテテスPhiloctetesのもとに姿を現し、怪我の完治を約束するとともに、彼の父father・ポイアスPoeasに与えた弓矢Bow and arrowを持ってトロイアTroyに渡り、ギリシア軍Greek armyに味方するように命じた。
カクスCacus
のちにローマRomeが建国される地を訪れたヘラクレスHeracles、3つの頭を持ち口から火を噴くfire-breathing怪物Monster・カクスCacusを退治killingし、エウアンドロスEvanderの娘daughter・ラウィニアLaviniaと結婚marriageした。
2人の間には、パラスPallasとラティヌスLatinusという2人の息子sonが生まれた。
エウアンドロスEvanderと一緒にアルカディアArcadiaから来住した者たちに文字を教え、彼らのうちのある者たちをパラティヌス丘Palatine Hillに定住させたのもヘラクレスHeraclesと言われる。
ヘラクレスHeraclesはこの地に滞在中に、自分に捧げられた神殿Templeを守る寺男Sextonと、食事とベッドと女を賭けてさいころを振り、勝った。
そのとき寺男Sextonから与えられた女が、その土地の娼婦Whore・ファブラFabulaである、とする伝説もある。
一説では、怪物Monster・カクスCacusはカムパニアCampania地方のエトルリア人Etruscansを攻めたが、その地に移住したギリシア人GreeksについてエトルリアEtruria側を応援したヘラクレスHeraclesに殺されたという。